林:そのころ奥さまと結婚なさったんですね。

小日向:39歳でまだ劇団員だったときに結婚したから、ぜんぜんお金なかったですね。

林:今、お子さんたちも同じような道を歩んでいらっしゃるんでしょう?

小日向:血っておそろしいなと思います。二人とも大学の演劇サークルに入っちゃって。下の子は「演劇サークルには入るまい」と半年間頑張ったらしいんだけど、やっぱり我慢できなくて、夏から入ったんです。長男はこの春卒業ですが、役者をやる覚悟を決めたみたいです。

林:小日向さん、本名でしょう。お子さんたち、お父さんのこと言われるんじゃないですか。

小日向:最初は「まさか」と思ってても、そのうちバレるみたいですね。でも大変ですよ、役者で食えるようになるって。僕も一歩間違えばどうなってたんだろうと思いますもん。「お父さんは芝居をやり続けて、42歳まで食えなかったけど、それが覚悟できるならやれば?」という感じですね。「やるな」とは言えないです。林さんもお子さんいらっしゃいますよね。おいくつですか。

林:娘が一人います。2月生まれで、来年20歳になります。

小日向:じゃあ、うちの下の子と同じ学年ですね。

林:小日向さんは「家族が僕を支えてくれて、家族が生きる希望です」とおっしゃってますよね。

小日向:僕は家が大好きなんです。家に帰って、家族がワサワサしてる気配を感じてるのがうれしいんです。

林:めずらしいんじゃないですか、俳優さんでそういう方。

小日向:僕があたりまえだと思って話すと、みんな驚いた顔をしますね。

(構成/本誌・野村美絵)

週刊朝日 2018年4月20日号より抜粋