ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「麻生太郎財務大臣」を取り上げる。
* * *
1億総クレーマーのご時世。消費者や国民を前にすれば、誰もが真摯に謙虚に振る舞うのが当たり前……とは限らねぇぞ! そんな気骨すら感じてしまう姿勢を貫いているのが、現財務大臣である麻生太郎元首相。問題の本質とは別に、私は昔からこの人の『生まれは良いが育ちは悪い(本人談)』雰囲気が好きです。愚直で慎重な如才なさこそ正義とされている世の中において、特権的に洗練された下品さと横暴さは、それだけで強い。常日頃『自分の歩く進路は譲らない(お年寄りや身障者などは除く)』をモットーに生きている私ですが、以前六本木ヒルズでお馴染みのマフィアスタイルに身を包み、真正面から歩いてくる麻生氏に出くわした時は、反射的に道を開けてしまったほどです。
此度の森友問題に関するメディア対応も圧巻でした。だいたいテレビ局も新聞社も追い詰め方が拙い。『悪を吊るし上げる』という図式に囚われ過ぎていて、質問のトーンが中学校の生徒会みたいで、終始リズムは麻生サイドが握っていた印象。誰ひとり麻生さんを論破してボコボコにしてやろうという気概がありません。麻生さん、完全に愛されています。リスペクトされています。まさに強者のロマンを、若い記者たちも麻生太郎という男に見てしまっているのではないでしょうか。そしていつも思うのは、この人は裏で「けッ! この小市民どもがッ!」と言ったりしていないだろうということ。『偉そうだけど見下さない』、これぞ生まれながらの上流階級が纏う気位の高さ。端から周囲のことなど意に介さないのですから、そりゃ総理大臣なんて務まらなくて当然です。それよりも『先生然』とした政治家風情を矍鑠(かくしゃく)と示し、この世の不平等さ・不透明さを叩きつけながら、今一度日本を鍛え直して頂きたい。