「全体の中で、インパクトを残すため美しい死を演出するケースがある。また、演技ドルは二番手、三番手が多い。そもそも二番手は大切な人を守るため自ら犠牲の道を選ぶという役どころになりやすい」(同)
だが、最大の理由は“美しいものは儚(はかな)さが似合う”から、ではないかという。
「アイドルのように美しい演技者には儚い死がぴったり。視聴者のカタルシスを誘い、演技力の評価にもつながります」(同)
美“男”薄命、といったところか。
『韓国テレビドラマコレクション』の2018年版には、新たなジャンル「ファンタジー」が加わった。編集長の岡崎さんによれば最近、このジャンルが激増。
「大きなきっかけは16年放送の『シグナル』。実際のさまざまな未解決事件をモチーフに、現在と過去の刑事が壊れた無線機でつながって事件解決に奔走する。社会派要素に空想の設定を組み合わせたシナリオが秀逸でした」(岡崎さん)
ファンタジーでは脚本の面白さに加えて役者の演技力も問われる。設定や題材が現実離れしているからだ。
一人多役もキーワード。韓流ドラマをいち早く視聴できる「スカパー!」の3月のラインアップから紹介すると、Mnetで放送中の「ブラック(原題)」は、“元祖韓流スター”ソン・スンホンが、冷酷な死に神と頼りない刑事を演じ、新境地を開いた。2人の魂が1人の体に宿る「トゥー・カップス(原題)」(KNTV、3月26日~)も一人二役。カメレオン俳優の異名をとるチョ・ジョンソクが堅物刑事と天才詐欺師を見事に演じ分けた。
前出の高橋さんは説明する。
「温かな面と冷たい面などプラスの要素を保ちつつ、マイナスの要素も見せられるため、どちらかの印象が強い俳優にとってはイメージ脱却にとてもいい。悪役とともに、誰もが演じたがる役どころです」
例えば過去には、JYJのユチョンが「屋根部屋のプリンス」(12年)の一人二役をきっかけに、演技派として認められた。ただ、下手に演じると酷評されるため、一人二役はもろ刃の剣でもある。