俳優一家のもとに生まれ、同じく俳優・芸能一家に生まれた妻・安藤サクラさんと結婚。ご夫婦共にその演技力が高く評価される存在、柄本佑さん。作家・林真理子さんとの対談は、お仕事についてはもちろん、「エロに対する熱量」の大切さについてまで及びました。
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林:今度は映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」に主演されるんですよね。かつて「写真時代」を手掛けた末井昭さんのエッセーが原作で。見せていただきましたが、ものすごくおもしろかったですよ。映画で描かれてるのは70年代後半から80年代初めで、私は年齢的にもうちょっと後なんですけど、時代の残り香みたいなものは知っているんです。カメラマンとかライターのお兄ちゃん、モデルさん、当時の新宿あたりにいそうないかがわしい感じやファッションが見事に再現されていて、すごいなと思いました。これを見て当時をなつかしがる人、いっぱいいると思う。
柄本:当時を再現するということに関しては、ほんとに徹底してましたね。衣装合わせも1回目は納得するものが集まらなくて、2回目でようやく決まったんです。衣装、美術、小道具、ものすごくこだわってやってました。
林:おたくのお父さん(柄本明)は当時のこと、知ってらっしゃるんじゃないですか。
柄本:知ってると思うんですが、撮影前に「末井さんという『写真時代』の編集長、知ってる?」って聞いたら、ピンときてなかったですね。ちょっと居場所が違ったのかもしれないです。
林:アングラじゃなくて、もうちょっと日の当たるほうだったかもしれませんね。私、当時、秋山道男さんと一緒にお仕事していたんですが……。
柄本:秋山さんという方は?
林:映画のプロデュースとか、ご自身も俳優や声優、作詞もなさっている方です。私は秋山さんが「熱中なんでもブック」(79~80年)という子ども向けのPR誌を創刊するときにスタッフとして声をかけられたんですが、出てくる人が「写真時代」とけっこう重なっていたんです。