ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ウェブメディアの埋め込み表示における著作権問題を解説する。
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ネットが登場したことで、他人の文章や写真をコピーして発信することが容易になった。その結果、著作権を巡る問題が様々なかたちで発生している。著作権者たちを長年悩ませてきたこの問題について、新しい判断が2月15日、ニューヨーク連邦裁判所で下された。
この裁判の原告は写真家のジャスティン・ゴールドマン氏。自身の写真の著作権が侵害されたとして、米右派系ニュースサイト「ブライトバート」やタイム誌など9社を訴えた。ゴールドマン氏がスナップチャットで公開した写真は、NFLスター選手の獲得交渉の裏側を示唆するものだと話題を集め、複数のユーザーによりツイッターに無断転載されていた。訴えられたウェブメディアは、そうしたツイートを記事内に埋め込み表示していたのだが、ゴールドマン氏はその表示が著作権侵害にあたると主張していた。
見た目には一つのウェブページであっても、表示されているコンテンツがすべて同じサーバー上にあるとは限らない。ツイッターやユーチューブなどは、自サイトにあるコンテンツを他サイトのコンテンツに埋め込んで表示できる機能を提供している。世界中のメディアで多数のニュースサイトが、その機能を利用して第三者のツイートを記事内に掲載している。
訴えられたメディア側は、「サーバーテスト」と呼ばれる判断基準にのっとった略式判決(公判を行わずに出される判決)を裁判所に求めた。この基準は、過去にグーグル画像検索の埋め込み表示が争点となった裁判で示されたものだ。著作権侵害の責任の有無は、ウェブページに表示される画像が自らの管理するサーバー上に保存されているか、第三者のサーバー上に保存されているかにより決まるとされた。この基準に則して考えれば、ツイッターのサーバーに保存された画像を埋め込み表示したメディアには、著作権侵害の責任は及ばないという主張だ。