「『働き方改革国会』と名付けた今国会の目玉法案を通せなければ党内の求心力も低下し、秋の総裁選にも影響しかねない。それに、安倍政権は『アベノミクス』の成果をアピールするため経団連に労働者への賃上げを要求するなど、頼みを聞いてもらってきた。その見返りに経団連の『悲願』である裁量労働制の拡大を今国会で実現しないと、財界との関係も悪化しかねない。最後は担当の局長や加藤勝信厚労相の更迭と引き換えにしても、何としても法案を通そうとするでしょう」

 安倍首相の答弁の矛盾はほかにもある。スパコン助成金詐欺事件で、問題のスパコン開発会社の顧問を務めていた元TBS記者の山口敬之氏との関係について、安倍首相は1月30日の衆院予算委で、「私の番記者であった者から取材を受けただけ」と答えている。

 だが、山口氏の著書『総理』の中では、安倍首相とゴルフや登山を楽しんだり、安倍首相から頼まれ麻生太郎財務相の意向を探る役目を負ったりと、ただの「番記者」とは思えない記述が相次いで出てくる。

 山口氏は、ジャーナリストの伊藤詩織さんが性被害を訴えている事件でも論争の的となっている。山口氏が準強姦容疑で逮捕される直前に警視庁の刑事部長(当時)の判断で逮捕状の執行が停止され、その後、不起訴となった経過を、野党が「もみ消しではないか」と追及しているのだ。

「ここまでの調査では、刑事部長は伊藤さんが連れ込まれたホテルの防犯カメラの映像など、重要な証拠を見ずに逮捕状の執行停止を判断した疑いが強まっている。私は国会で、過去の不起訴を覆した実例などにも言及して再捜査の必要性を提言しているが、警察庁は応じない。不起訴相当を決めた検察審査会も、審査員にどんな証拠が提示され、どんな議論がされたかは被害者本人にすら非公開。『もみ消し』があったのか検証できない制度になっている」(前出の柚木議員)

 いつも肝心の情報は開示されないまま。こんなことをいつまで続けるのか。(本誌・小泉耕平)

週刊朝日 2018年3月9日号

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