ドラマや舞台よりも深いところで、暴力や性愛をきちんと描けるのが映画。だから、裸のシーンは非常に重要なんです。この映画に出演してみて思ったのは、日本でも、もっと映画で裸になる女優が増えればいいのに、ってこと。だって、有名な人が脱げば話題になるし、お客さんが映画館に足を運ぶきっかけになるでしょ? 僕なんか、集客力もないのに、今回一番上に名前が出ちゃって。……大丈夫かな(笑)」

 俳優としての、先の展望はほとんどない。これまでも、野心や野望のようなものを持たずに生きてきた。

「ひとつだけはっきりしているのは、芝居に関して、自分のやり方は持たないようにしていることかな。『こうじゃなきゃいけない』という考え方を持たないことが、偉そうに言えば、僕の“俳優哲学”ですね。哲学を持たないことが哲学(笑)。作品を自分一人の力で最後まで完成させなければならない画家のような職業と違って、芝居はあくまでチームプレーなので、物事を最後までやり遂げようとする時に、俳優の頑固な意志なんて、邪魔になるだけだから」

 肩の力を抜いて芝居と対峙するようになったのは、40歳を超えた頃。

「昔は寡黙なフリをしていたけど、それは、バカがバレるのが怖かったから。40ぐらいから、いろんなことを諦めて、すっかり開き直りました(笑)。“人間は成長しない”。それが、50年生きて唯一わかったことです」

 笑った顔に、中年の渋さと少年の純粋さが、混ざり合った。(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日 2018年2月16日号

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