孫崎:ところが、米シンクタンクのランド研究所が3年前に、東シナ海の安全保障環境がすっかり変容しているという報告書を出したんです。米中の軍事バランスは、2000年代初頭までは米国の圧倒的優位だったのが、10年ごろには対等になり、17年には逆転して中国が優位に立つと予測しています。理由は米軍基地を攻撃できるミサイルの精度が上がったからです。1200の短距離・中距離弾道弾と巡航ミサイルを配備し、米軍基地の滑走路をピンポイント攻撃すれば、もはや在日米軍は機能しないという状況になったのです。

久間:昔は中国軍の戦闘機が沖縄まで飛んできたとしても、燃料不足で中国に帰れなかったんです。ところが、いまや中国は空母を保有し、空中給油機も持っている。しかも、弾道ミサイル攻撃もできる。そうなると、沖縄ばかりに米軍基地を集中させておくのは、軍事戦略上においても合理性がないことになる。90年代とは状況はちがいます。

孫崎:いまは米軍基地が存在することで、日本はどれだけのメリットがあるのか。安全保障上どのくらいのメリットがあるのかを判断しなければならない。その一方で、基地を返還した場合、その地域に経済面や環境面でどれくらいの利益があるのかを判断する。そのうえで、後者が大きいということであれば返還するというのが大原則です。

木村:現在、沖縄でも米軍基地が返還されて再開発された那覇新都心などの経済効果が指摘されています。税収や雇用も飛躍的に伸びたという沖縄県の試算も出ています。

孫崎:そうです。そう考えると、普天間飛行場は海兵隊の基地ですが、海兵隊は世界に展開する即応部隊であって、その地域を守っているものではない。だから、普天間に海兵隊がいなければならない理由は日本にはないし、米国にもない。ましてや、辺野古に持っていかなければならないものでもない。状況が昔と大きく変わっているなか、もし、久間さんがいま防衛大臣を務めていたら、これまでの米国との交渉とはちがった主張をされるのでは?

久間:私はね、日米安保条約を改定する方向で動くと思います。占領期に旧安保(51年)を結んでから、もう70年近く経とうとしています。それをこのまま持続するのがいいのか。すでに冷戦構造も崩壊し、いまの時代に即した内容に変えていかなければならないと思っています。有事に際して、日本がもう少し幅広く活動ができるようにしておく必要があります。研究グループなどを設置して検討すべきです。

木村:久間さんがここで安保を見直していく必要性を説かれたのは、大変重要な発言です。主権国家としてはっきり言ってしまえば、条約上では日本が安保を破棄すると通告すれば、1年後には安保条約は解消され、在日米軍基地も撤去されることになる。安倍政権も腹を決めて、破棄とまでは言えなくても見直していくというくらいの覚悟を持たないといけない。

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