木村:久間さんのようなご主張をされるのが本当の保守だと思うけど、第1次安倍政権のとき、「原爆投下はしょうがない」と発言して防衛大臣を辞任していますが、あの真相は?
久間:あのときの講演会で話したのは、大戦で米国は早く日本をやっつけないといけない情勢にあった。ソ連も対日参戦し、北海道が分割されるかもしれない。それで広島に原爆を落とし、さらにもう一発ということで長崎にも落とされた。あのとき、1発目で「参った」と降伏しておけばよかったんだ。いまさら言ってもしょうがないですけどねと言ったら、あの発言にされた。安倍さんは発言全体の流れを把握していたから、私の発言がおかしくないことはわかっていた。私が発した単語はあるので、新聞報道も嘘ではない。政治判断で辞任しました。
木村:久間さんが大臣を続けていれば、と思います。地元では日米地位協定を一刻も早く改定すべきだという声が高まっています。沖縄で米軍ヘリの不時着事故が相次ぎ、小学校にヘリの窓が落下するなど、いつ大惨事が発生してもおかしくない。事故後、米軍は学校上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことを日米間で合意しながら、わずか1カ月で破りました。
孫崎:本土のメディアはほとんど報じていませんが、沖縄県議会は1月19日、保育園、学校、病院などの上空での米軍機の飛行・訓練の中止、普天間飛行場の5年以内の運用停止などを決議しています。私は沖縄県で条例を作って、学校、病院の上空の飛行禁止、夜間飛行の禁止など米軍機に対して規制することが必要だと思います。
木村:沖縄の自己決定権の条例というわけですか。
久間:自分たちの意思表示は大事ですが、米軍の規制に対する決定権にはなり得ません。
孫崎:そう。条例は直接、米軍の規制にはならないんです。しかし、米国は民主主義国家なのです。米国国民に、沖縄にいる海兵隊が条例を無視し続けていることを訴えかけていけば、米国の世論を喚起することができるのではないか。もはや、日本政府に要望しても何も期待できません。
木村:米兵が事件や事故を起こしても公務中だったら日本の警察は逮捕できないし、米軍機の低空飛行訓練にも規制がありません。米軍機が墜落・不時着しても現場検証もできない。95年に沖縄で米兵による少女暴行事件が起きて、県民の怒りが爆発した。この事件をきっかけに日米地位協定の運用が見直されて、殺人や強姦など凶悪犯罪に限って起訴前の容疑者の引き渡しが行われることになりました。しかし、米軍が“好意的考慮”を払った場合、という条件つきです。著しく不平等で、日本の主権が無視されています。基地には有害物質による環境汚染問題もあります。