バンクーバー、ソチと2度の五輪に出場し、プロに転向後も解説者として活躍する鈴木明子さんに、フィギュアスケートを見るとき、いつも頭に浮かぶ「?」を聞いた。
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Q1.羽生選手がこだわっている「4回転ルッツ」って、どうしてそんなに難しいんですか?
口では説明しにくいので、ルッツとフリップの各ジャンプの軌道を描いた図を見比べてください。ルッツは、ジャンプに入る軌道とは「逆」に回転しないといけないジャンプです。方向を変えるために一回勢いを抑えるわけです。それまでの勢いを使えない。そこが難しい。点数もアクセルを除けば一番高くなります。
また、踏み切る際、エッジをアウトサイド(小指側)にしっかり倒していないと、エッジエラーを取られてしまいます。
Q2.「ノーミスの演技をしたい」と選手がよく言いますが、ノーミスってそんなに難しい?
難しいです! 試合本番ではミスしてしまった技も、練習では10回中10回、100%できているんです。そうでないとそもそもプログラムには組み込みません。なのに、本番ではミスをしてしまう。これは、360度観客がいる状況や、本当にできるかどうか心配しすぎてミスしてしまったなど、いろいろと要因はありますが、練習どおりに演じることは、それくらい難しい。練習どおりにやるにはどうしたら良いのか。それが選手の永遠のテーマとも言えます。
Q3.ジャンプに全て成功しても点数が低いことがあります。「回転不足」のためだと解説者は言います。回転不足って、どうすればわかるんですか。
正直、私たち競技経験者でも肉眼での完璧な判断は難しいです。テレビで一般の視聴者の方が見分けるのは、ほぼ不可能に近いのではないでしょうか。
ただ、採点に時間がかかっているときは、ビデオで回転がどこから始まっているか確認している場合が多い。スローモーションで確認されてしまうと、回転不足になることが多いので、時間がかかるようでしたら、回転不足を取られていると思ってもいいかもしれません。