放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は小室哲哉氏とKEIKO氏の関係について。
* * *
10年ほど前だろうか。とある雑誌の取材で小室哲哉さんと対談をさせていただいたことがあった。
対談は小室さんの家で行うことになった。家に入ると、出てきたのはKEIKOさん。ちなみにKEIKOさんと僕は同学年。1972年生まれのまさに団塊ジュニア世代。globeのKEIKOさんのイメージ。正直、ちょっと面倒な人なんだろうなと思っていた。が、会って数秒でそのイメージは変わった。とても明るく、サバサバして吹っ切れた性格。その後に出てきた小室さん。一番CDが売れていた時期の小室さんはおそらく一緒に仕事したら大変そうだったんだと思う。だけど、10年ほど前は、globeとしてもクリエーターとしても、一個、抜けたところだっただろう。楽しそうに仕事をしている感じ。だから過去の壮絶な貯金額の話なんかも思い出話として語ってくれたりして。
そのときに驚いたのは、小室さんとKEIKOさんの関係。KEIKOさんは小室さんのことを突っ込みまくって、頭を叩いたりして。僕はその光景に戸惑いドキドキしたのだが、小室さんは嬉しそうだった。
それを見て思った。小室哲哉を変えたのはこの人なんだと。
人生を上り続けてきた人が階段を下りるというのはとても難しいことだ。
例えば、俳優さんで一度、主役をやってしまうと、主役にこだわり続けるあまり、その階段から下りるのが難しくなってしまう。アーティストもそうだ。ずっと売れ続けるイメージを与えようとしすぎて、世の中とのズレが出すぎたり。CDがオリコン1位という、世間があまり求めていないだろう栄冠にこだわり続けるのも、大変そうだ。2位だっていいのに、その階段を下りることはできない。
ヒットを出し続けなければいけなかった小室哲哉。ずっと走り続けて、そのプレッシャーと戦い続けていた小室さんのことを楽にしてあげたのは、きっとKEIKOさんなんだと思えた。