そんな現代の無臭危機を救うべく、久しぶりにプンプンメラメラと匂い立つ女性が現れました。日本相撲協会評議員会議長の池坊保子さんです。この悠然なる貴賓室感。どこからどう見ても一筋縄では行かないであろう面倒臭さ。『お化粧臭い』というのは、言うならば『面倒臭い』ことなのです。そしてこの『面倒臭さ』が今の日本には足りていない。も杓子も面倒臭いことを言って嫌われないようにと、とりあえず上っ面ばかりの正論と物分かりの良さが横行している世の中にあって、池坊さんは正々堂々と『お化粧臭さ=面倒臭さ』を体現されています。

 化粧は武装です。つまりそれは『闘う意思』があるということ。池坊さんの御髪は通称『パワーヘアー』と呼ばれる、女性政治家やアンカーウーマンなどの象徴的スタイルで、かつてはイギリスのサッチャー元首相や櫻井よしこさんなど、錚々たる女傑たちがその威厳を示すためにブローと逆毛とスプレーを多用し作っていた、今や伝統レベルの髪型です。90年代以降は小池百合子さんや安藤優子さんのようなショートスタイルがキャリア女性の主流ですが、2018年の今、しかも髪の腰や張りもかなり失われているはずの75歳にして、あの御髪を維持していらっしゃるのは、池坊さんお見事です。相撲界の旧態依然とした慣習や体質よりも、いちばん必死に保たれていたのは保子のパワーヘアーだった。そう考えると、貴乃花親方のマフィアファッションにも合点がいきます。あのマフラーもグラサンも八角理事長などではなく保子と闘うための武装。

 それにしても、まさか究極の裸世界・男世界の大相撲を通して『お化粧臭さ』を再認識するとは。この世はすべて背中合わせの矛盾だらけ。素敵ですね。

週刊朝日 2018年1月26日号

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