1922年の創刊以来、初となる猫を表紙にした「週刊朝日」。表紙以外にもカレンダーや連載コラムにも猫が登場するなど、猫づくしだ。
表紙を飾ったハナは、津軽のリンゴ農園に暮らすコトラの子として、2014年の春に生まれた。
「5匹いた子猫のうち、いちばん人懐こいのがハナちゃんでした」
そう語るのは、テレビ番組で猫たちの四季を撮影するために、コトラ一家に密着していた動物写真家の岩合光昭さん。表紙の写真が撮られたのは、生後8カ月の頃だ。
「目の前でごろんごろんするのは、ハナちゃんお得意の仕草。冷たい雪の上ではやらないだろうと思ったのですが、僕の気持ちを読んだかのように転がってくれたので、急いでシャッターを切りました」
足かけ1年4カ月に及んだ撮影の最終日。感慨深い思いで、右目でファインダーを覗きながら別の猫を撮っていた岩合さんの左目に、ハナが歩いてくる姿が映った。
「まっすぐに近づいてきたと思ったら、僕の頬をペロペロと舐めはじめたんです。そんなことは初めてだったので、僕も感極まって、ぽろっと涙をこぼしてしまいました。あれはハナちゃんからの別れの挨拶だったのかもしれません」
この夏、岩合さんが3年ぶりに津軽を再訪すると、ハナはお母さんになっていた。人の気持ちに寄り添うやさしい性格は、子猫たちに受け継がれていたそうだ。(本誌・伏見美雪)
※週刊朝日 2017年12月29日号