「日本人の死因の1位と2位はがんと心疾患。そして3位が肺炎です。肺炎で亡くなる多くは高齢者。そのうちの7割が誤嚥性肺炎によるものです」

 そう説明するのは、呼吸器専門医で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師。誤嚥性肺炎は自覚症状が少なく、気づきにくいそうだ。日常生活の中で注意して観察するべき点をこう指摘する。

「誤嚥性肺炎の兆候は、水の飲み方から始まります。水を飲む際に、むせるようになったり、うまくのみ込めなくなったりしたら要注意です。水だけでなく唾液も注意が必要です」

 そのほか風邪をひいたときの症状にも注意が必要だ。

「せきがいつもより長引いたり、体も重たく感じたら、誤嚥性肺炎の可能性があります」

 誤嚥と聞くと食べ物や飲み物にむせてしまうことを思い浮かべる人が多いと思うが、これは自身で気づくことができるため「顕性誤嚥」と呼ばれる。嚥下機能の衰えが主な原因のため、筋力が低下する高齢者に多い。だが、大谷医師はこう注意を促す。「誤嚥性肺炎でより重要なのは『不顕性誤嚥』なんです」

 不顕性誤嚥とは、就寝中に無意識のうちに、唾液が気管に入り込んでしまう誤嚥のこと。そのときに口の中の雑菌も併せて気管に流れ込んでしまう。

「不顕性誤嚥は高齢者に限らず起こりえます。嚥下機能が衰えていなくても、たとえばアルコール摂取でのどの筋肉が弛緩しているうちに寝れば、誤嚥する可能性はあります。気づかないうちに誤嚥を繰り返し、特に40代以上になると口が乾きやすく、唾液内に雑菌が増えるため肺炎になりやすい」

 不顕性誤嚥の原因はのどの筋力の衰えによる嚥下機能の低下だけではなく、ほかにも重要な原因があると大谷医師は指摘する。

「小さな脳梗塞と呼ばれる『ラクナ梗塞』です。高齢者によくみられる症状で、細い血管が詰まる病気。軽度なものは、命を脅かすものではありませんが、嚥下機能に重要な体内物質を減少させます。ラクナ梗塞の原因は動脈硬化。顕性誤嚥に加え、不顕性誤嚥もしっかりと意識してほしいので、生活習慣病の予防にも注意を払ってほしいです」

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