ヴァイオリン、チェロを使った「ほんとだよ」も求愛の歌。情感に富んでいる。遠藤の弾き語りによる3曲のうち、「ただそれだけ」「君のことすきだよ」も求愛の歌だが、ささやきかけるようなやさしい歌いぶりだ。
遠藤ならではの独特なギター演奏に情熱的な歌が続く「猫は眠っている、NIYAGO」は、「雨あがりのビル街~」と並ぶ本作のハイライトだ。12分を超す長尺曲だが冗漫さはなく、聴く者の耳を捉えて離さない。
ちなみに、2014年発表の『ひとりぼっちのNIYAGO』には、オリジナルのレコーディングの際のアウトテイクが収録されている。いずれも遠藤賢司単独のギターの弾き語りだ。
『niyago』に続き、72年に「カレーライス」がヒットし、遠藤は一躍脚光を浴びた。
79年の『東京ワッショイ』はパンクの登場とテクノ・ポップに刺激された会心の作で、ロックへの変身と語られた。このアルバムには、遠藤が本来持っていた資質、幅広い音楽性、東京や日本が生んだ大衆文化への愛着、宇宙観が表出している。収録曲「不滅の男」が話題になり、遠藤自身を物語る言葉にもなった。エレキを手にしての爆音ギター、バンド活動、エキセントリックなライヴ・パフォーマンスでも話題を呼んだ。
“言音一致の純音楽家”を自称した遠藤の音楽は、激しさとやさしさに極端に二分され、年齢を重ねるごとにその度合いも増していった。ジャンルを超越し、自身の独自のスタイルを貫き通したワン&オンリーの存在だった。
『niyago』はそのすべての発端、第一歩を記した傑作だ。日本の音楽史に残る名盤である。(音楽評論家・小倉エージ)
●『niyago』完全限定生産アナログ盤(ポニーキャニオン PCJA.00071)
●完全限定生産カセット(同 PCTA.00286)