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 ニューヨーク市内には、毎日演奏を聴かせるフルタイムのジャズ・クラブだけでなく、週末や、週のうち数日バンドをブッキングしているレストランやバーを含めると、180近いヴェニューが存在している。ふらりと入ったレストランで、驚くような熱い演奏や、円熟のプレイに出逢えることもよくあり、生活の中に音楽が、さりげなく存在していると言えよう。また世界中から集まった様々なレベルのミュージシャンが、それぞれのヴェニューで切磋琢磨している。その中で、日曜日のディナーを、リラックスして愉しむとしたら、ウェスト・ヴィレッジ、13丁目のカフェ・ループがお勧めだ。カジュアルなビストロで、料理、ワインのコレクションも豊富で、お手頃。そしてヴィンテージ・ワインのような芳醇な香を放つような音楽をも、満喫できる。

 日曜日の夜のカフェ・ループを彩るのは、大ヴェテラン・ピアニスト、ジュニア・マンス。1928年シカゴ生まれ、現在83歳でありながら、現役バリバリのピアニストである。音楽学校ではない、先輩に当たるジャズ・レジェンド達からの口承伝授を受けている、いわゆるオールド・スクーラーである。ブルース、ゴスペル、そしてメロディアスなスタンダードを、長年のパートナーを務めている田中秀彦(b)と共に、しっとりと、時にアーシーにゴリゴリと、聴かせてくれる。ジュニア・マンスはカフェ・ループをホーム・グラウンドのように気に入っており、前三作“Letter From Home”、“Out outhe”、“Live at Cafe Loup”は、ここでのライヴ・アルバムである。いつもは予約なしでも入れるこの店も、録音時には超満員となり、その活気溢れる雰囲気もアルバムに収録された。さらにこのクオリティの演奏がノー・チャージというのが嬉しい。日曜日の夜にニューヨークに滞在のチャンスがあれば、ぜひ、ジュニア・マンスのソウルフルなブルースにふれて、アメリカン・ミュージックのルーツを体感してみてはいかが?

 ふらりと立ち寄ったこの日も、ルー・ソロフ(tp)、バスター・ウィリアムス(b)、デューク・エリントン・オーケストラのリーダー、トミー・ジョンズ(p)のトリオが、小粋なスウィングを聴かせてくれた。いつ訪れても、素晴らしい演奏と、美味しいお酒と食事がサーヴされる、ヴィレッジの週末の定番コースである。

■Cafe Loup (カフェ・ループ)
105 West 13th Street
New York NY 10011
tel. 212.255-4746
http://www.cafeloupnyc.com/
月 12PM~3PM&5:30PM~11:30PM
火~金 12PM~3PM & 5:50PM~12AM
土 5:30PM~12:00AM
日 12PM~3:30PM & 5:30PM~11:30PM
ライヴは日 12PM~3:30PM (The Bob Kindred Trio) & 6:30PM~9:30PM (Junior Mance)