作家、ミュージシャン、映画監督などとして幅広く活動し、最近では自身初の料理小説『エッグマン』を上梓したばかりの、辻仁成さんのご登場です。息子さんとパリにお住まいの辻さんは、ファッションも身のこなしも洗練されていて、スタッフ一同「カッコよかった~」とため息。言葉のすべてから息子さんへの深い愛情が伝わってくる、作家・林真理子さんとのあたたかい対談でした。
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林:フランスで翻訳されてますよね。
辻:9冊出ています。
林:有名なフランスの文学賞もとったんですよね。
辻:フェミナですね。
林:日本人は一人だけでしょう?
辻:そうですね。100年ちょっとの歴史がある文学賞で、ロマン・ロランとかサン・テグジュペリも受賞しています。30年ぐらい前から外国小説賞というのができて、僕はそれの15回目だったかな(『白仏』で受賞)。僕の場合、作家の名刺がないですから、フォリオというフランスの文庫になっているので、それを名刺代わりに渡してなんとか、体面保っています。
林:素晴らしいです。
辻:カフェのおじさんたちも最初冷たくて。僕、ラフな格好で昼間からビール飲んだりシャンパン飲んだりとウダウダしてるから、お店の人に「おまえは何をやってるんだ。怪しいやつだ」なんて聞かれるんですよ。それで、「作家です」と答えても、怪訝そうに「作家? どんなの書いてるんだ」とか言われる。フォリオ版の『白仏』とかを渡すわけですよ。すると次回から、ムッシュー、何になさいますか、と敬語になります(笑)。
林:フランスって、作家はすごく尊敬されるんですってね。
辻:小説家とか詩人とか画家はどっか生きた化石みたいな感じで大切にされます。この人たちを守ってあげようという気持ちになってくれるみたいで、それで僕はすごく助かっているんです。
林:息子さんは現地校に通っているんですか。
辻:現地校です。カトリックのけっこう厳しい学校なんです。順番待ちでなかなか入れないので、息子が生まれてすぐのころから校長先生に小説を何回も送っていたら、ある日手紙が来て「この子が学校に入るのは3年先です。でも入れてあげます」。