個人だけではない。タックスヘイブンは多国籍企業の「利権の温床」になってきた。米スポーツ大手のナイキ社が、ロゴの商標権を持つ会社をバミューダ諸島につくり、収益を移していたことも判明した。
多国籍企業の経営に詳しい慶応大学総合政策学部准教授の琴坂将広氏は、問題の根深さを指摘する。
「多国籍企業などは、その国の税金で整備されている道路や港湾などを利用して事業を行っている。活動に見合う税負担をしていないのは、非常に問題です。地場企業はタックスヘイブンのような節税手法を使えません。多国籍企業はタダ乗りして競争の優位に立てるわけで、企業間の競争もゆがめられてしまいます」
昨年公表された「パナマ文書」では各国の首脳らが辞任に追い込まれた。ICIJに参加する記者の一人はこう期待する。
「パラダイス文書では、企業の取締役会の議事録など、パナマ文書より詳しいデータが数多く見つかっています。世界に与えるインパクトはパナマ文書以上になりそうです」
うまく税逃れしたと思っている個人や企業は、枕を高くして眠れなさそうだ。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2017年11月24日号