タックスヘイブンでの資産運用が明るみに出たエリザベス英女王(c)朝日新聞社
タックスヘイブンでの資産運用が明るみに出たエリザベス英女王(c)朝日新聞社
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 ある文書が世界中のお金持ちたちを心配させている。その名も「パラダイス文書」。南ドイツ新聞と非営利組織の国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手したものだ。

 大西洋にある英領バミューダ諸島など、タックスヘイブン(租税回避地)の法人などに関する電子ファイル1340万件が含まれている。これを各国の記者が共同で調べたところ、世界の政府要人やセレブらが〝税逃れ〟に躍起になっていた実態が明らかになった。

 中でも注目されたのが英国のエリザベス女王。所得税などを逃れながら個人資産の運用を行っていた。ICIJの報道によると、2005年に英領ケイマン諸島のファンドに750万㌦(約8億6千万円)を投資し、多額の分配金を得ていた。高金利の家具販売で消費者団体から批判された企業にも投資していた。

 タックスヘイブンの活用がすぐに違法行為になるわけではないが、スキャンダルとして騒ぎとなっている。英BBCによると、労働党党首は「納税を回避する行為が社会に与える損害の大きさを認識すべきだ」と指摘。一般国民の納税への負担感は強く、王室への信頼を揺るがしかねない。

 問題は他国にも広がる。米国ではロス商務長官が、ロシアのプーチン大統領の娘婿が取締役のガス会社との取引で、利益を得ていた。カナダのトルドー首相の側近には、脱税の疑いが浮上。日本では鳩山由紀夫元首相が、バミューダ諸島に登記された香港が拠点のガス会社の名誉会長に就任していたことがわかった。

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