「整形外科医の立場からすると、寝たきり防止にはやはり足腰の健康を保つこと。腰やひざの痛みは、早めに治療をすることをおすすめします」(同)

 食事系では、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を意識してとっている医師が目立った。「ポリフェノールを多く摂取。EPA、DHAは毎日魚介類から摂取」(一般内科・80代男性)、「EPAによる予防効果」(循環器内科・60代男性)などだ。

 運動や食事のほかには、▽脳トレ系:「ランダムな数字を数ケタ覚えるようなトレーニング」(腎臓内科・泌尿器科・50代男性)、「車のナンバーで四則演算をする」(精神科・60代男性)、「好きなパズルを週末にして、頭を使う」(血管外科・循環器外科・50代男性)▽コミュニケーション系:「若い人と交際し、話す」(一般内科・消化器内科など・60代男性)▽仕事系:「生涯現役を目指すため、医療職を続ける」(消化器内科・60代男性)▽生活習慣病対策:「糖質制限、塩分制限、高血圧や動脈硬化予防」(一般内科・腎臓内科など・70代男性)などがあった。

 目を引いた回答の一つが、「毎日笑う」(消化器内科・40代男性)というもの。笑いは本誌でも以前取り上げたことのある予防法の一つだ。いつも笑っている人のほうが、そうでない人より認知症の発症リスクが低いという研究データもある。

「脱水予防」(小児外科・救急医療科など・50代男性)にも注目したい。一見、認知症と関係なさそうだが、「脱水と認知症は深い関係があることが分かってきた」(同)と述べている。実は、脱水を起こすと意識障害が起こりやすく、それが認知症の発症や進行につながるというのだ。

 一日の中で、大きな時間を占める睡眠にも予防のヒントはありそうだ。「良眠をとるための環境作りと、メラトニン摂取」を心がけているのが、稲田胃腸科(宮崎市)院長で消化器内科医の稲田享介医師(50代)だ。予防医学や東洋医学などにも造詣が深い同氏は、眠りは「気力」を保つために必要という。

「睡眠によって脳が一度クリアになり、気力がストックされる。これで翌日、その気力を十分に使うことができます。逆に眠りの質が悪くて気力がたまらないと、昼間にぼーっとして集中力が落ち、記憶力の低下につながります」(稲田医師)

 高齢になるほど失われやすい気力を充実させる眠りのために、稲田医師が実践するのが“光の遮断”。夜はインターネットやテレビを控え、アイマスクをして寝る。夜勤で眠りが浅くなるときは、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」のサプリメントをとるという。(本誌・山内リカ)

※1 回答者数315人。年代別は30代以下45人、40代79人、50代115人、60代65人、70代以上11人。性別は男性265人、女性30人

週刊朝日 2017年11月10日号より抜粋