
犬山紙子(いぬやま・かみこ)(左)/1981年、大阪府生まれ。ニート時代に書いたブログを書籍化した『負け美女』(マガジンハウス)でデビュー。現在はイラスト・エッセイストとして多くの雑誌で執筆。テレビ、ラジオにも出演している。今年1月に出産。さまざまな生き方の女性たちにインタビューし、自らの妊娠、出産も描いた新刊『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)を6月に発売した。(撮影/写真部・岸本絢)
夫は人気ロックバンドの名物マネジャーとして有名になり、今は漫画家やベーシストとしてマルチに活躍する劔樹人。妻は、「負け美女」「クソバイス」など独特のフレーズを編み出し、ユーモアあふれる視点でエッセーをつづる犬山紙子。サブカル界の人気者同士は、どのようにして夫婦となったのか?
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妻:なれ初(そ)めの話は、彼は照れると思うんですけど。
夫:まあ、そうですね……。
妻:出会いは、阿佐ケ谷ロフトAで私がトークイベントをした時です。つるちゃん(夫)が、フラッと来てくれたんですよ。
夫:2012年の夏だったかな。
妻:共通の知り合いから紹介されて、そこからみんなで飲みに行くようになったのが始まりですね。彼の活動のことは、その時は全然知らなかった。
夫:そんなに僕に興味もなかったんじゃないですか?(笑)
妻:最初はイベントに来てくれたお客様なんで、営業モードで接してました。
夫:そんなことなかったと思うんですよね。最初から横柄な感じだった。
妻:認識のずれがありますね(笑)。
夫:当時はロックバンド(「神聖かまってちゃん」)のマネジャーをしていて、会社がお店の近くだったんで、ちょくちょく行ってたんです。
妻:だから、その日に会ったのもたまたまだよね。
夫:僕は彼女のことを前から知ってたんですけど、実際話すと声がキンキン高いなって思いました。
妻:身体的特徴じゃん(笑)。
夫:イメージと違ってた。
妻:落ち着いて見られることが多いからね。私は、つるちゃんのことは、腰の低い真面目な青年だなって思いましたね。ずっと恐縮してたし。
夫:そうですね。だからこういう話をするのも、すごく緊張するんですよ。
妻:あとで彼のブログを見たら漫画や文章にキラリと光る面白さがあって、もっと友達として仲良くしたいと思って、遊びに誘うようになったんです。
――「この人すごくいい」逃げる夫を妻が押し切った
妻:出会ってから数カ月後、私に卵巣嚢腫(のうしゅ)が見つかった。
夫:年末だったと思います。
妻:9割は良性と医者に言われたけど、大きな手術もあって、とてもナーバスになってしまった。そんな時につるちゃんが支えてくれて、「この人すごくいい」って心が動きました。