林:あれまあ。
丹羽:あまり小説で感動できなくて。でも、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』や『魅せられたる魂』は、人生の指針になるほど感動しました。ベートーベンやミケルアンゼロ、トルストイの3人の天才の力がジャン・クリストフの中に投げ込まれており、ジャンという人物の基調となっています。
林:私は途中で挫折した思い出しかありません。でも、会長も『ジャン・クリストフ』を最近また読み返したら、途中でギブアップしたそうですね。年齢とか時代によって、同じ本でもまったく印象が違って。
丹羽:そうなんです。昨年末、最近感動する本がないからと『ジャン・クリストフ』をまた読んでみたんだけど、感動しないんです。年齢や環境、過去の読書歴によって感じ方が違うんだと改めて思いました。結局半分でやめてしまいました。
林:会長は、「おすすめの本は?」と聞かれると、「そんな本はない」とおっしゃるそうですね。
丹羽:そうそう。「自分が読みたい本を読むのが読書です。私の経験と感じ方で、ある本をおもしろいと思っても、あなた方に感動を与えるとは限らない。自分にとっていい本は、あなたが決めなさい」とお答えしています。飢餓に瀕すれば何を食べてもおいしいと思うのと同じで、まずは求める気持ちがないといけません。
林:どうしたら飢餓状態になりますかね。今の子はスマホ、スマホ、ユーチューブ見てまたスマホ……。
丹羽:想像力が不足してることを、本人が自覚しなきゃいけない。
林:会長は恋愛なさったとき、生身の女性は本で読んだとおりとか、本よりがっかりとか、思われましたか。