民進党の山尾スキャンダルで「追い風が吹いた」(自民党幹部)のは、安倍晋三首相だ。
しかし、9月7日のロシア・ウラジオストクでのプーチン大統領との3時間20分に及んだ首脳会談は「実質的な意味はなかった」(外務省幹部)と散々な結果に終わった。
安倍首相は暴発を繰り返す北朝鮮に対して制裁圧力を強めるよう働きかけたが、プーチン氏は「外交的解決しかない」と繰り返すのみで相手にしなかった。
悲願の北方領土返還交渉でも海産物の養殖など共同経済活動について5項目を優先実施することで合意したのみ。
法的立場についてはロシア側の主権を譲らないプーチン氏になすすべはなかった。ロシア政治に関し国内第一人者の北海道大学名誉教授、木村汎氏は極めて手厳しい。
「事実上の門前払いの予想どおりの結果。安倍首相はプーチン氏が誰ひとり信頼しない、自分以外は全て敵という人生観を持ち、その時々の状況に便宜的対応をする二枚舌を使う並外れた天才であることをいまだにわかっていない。現状では領土を一島たりとも返す意思はない」
そもそも「地球儀を俯瞰する外交」を謳う安倍外交だが、国際医療福祉大学教授(政治心理学)の川上和久氏はこう指摘する。
「中国へのけん制のために、プーチン、トランプという大国のリーダーと密な関係を築こうとしているが、一ファンを公言して、AKB48の握手会に率先して行く趣がある。単なる強いリーダー好き」
また、模索した北朝鮮電撃訪問は断念した。
「その代わり、近々の電撃訪中を画策している。そのための布石を日中国交正常化45周年の行事にからめ、二階俊博幹事長にも動いてもらってます。本人は『媚中外交に取られようが、保守の俺だからこそできる。総理はリアリストに徹するべきだ』と周囲に吠えているようです」(政府関係者)
中国もロシア同様に北朝鮮有事対応をめぐって慎重な姿勢。首相に近い自民党議員はこう吐き捨てた。