内田春菊(うちだ・しゅんぎく)/漫画家、小説家。代表作に漫画『南くんの恋人』。小説『ファザーファッカー』で直木賞候補、『キオミ』で芥川賞候補。俳優、ミュージシャンとしても幅広く活躍している
内田春菊(うちだ・しゅんぎく)/漫画家、小説家。代表作に漫画『南くんの恋人』。小説『ファザーファッカー』で直木賞候補、『キオミ』で芥川賞候補。俳優、ミュージシャンとしても幅広く活躍している
この記事の写真をすべて見る

 大腸がんが発覚し、「がん宣告以上にショックだった」人工肛門を造設した漫画家の内田春菊さん(58)。「恋愛をやめた」という心境の変化など、赤裸々に明かしてくれた。

【マンガ】漫画家・内田春菊 大腸がん闘病記はこちら

内田春菊大腸がん闘病記 「私、人工肛門になっちゃった」よりつづく

 人工肛門の手術から現在まで、約1年半。幸いにも現在は、再発の心配もなく、人工肛門の生活にもようやく慣れてきた。

「今は、ここ(人工肛門)だけ、赤ん坊に戻っちゃったなという感じ」

 と、内田さんは漫画家らしい独自の表現をする。

 わき腹に作った人工肛門は、直径3~4センチで、見た目は「梅干しみたいな感じ」。人工肛門の働きは便やおならを出すのみ。直腸のように便をためる働きはなく、「トイレに行きたい」という便意を感じることや我慢することはない。つまり、腸内で消化吸収されるたびに、自分の意識とは無関係に排せつされる。

「赤ちゃんって、自分でコントロールがきかないから、授乳中に排せつしたりするけど、まさにそんな感覚。あの“もよおす感覚”が懐かしいです」

 おならも出ている感覚はあるが、制御がきかない。舞台上や収録中でも、音が出てしまう可能性がある。

「おならするときは、プスプスと不思議な音がするんです。静かな場所で出たりすると、ひやっとしますよ」

 そんなときでも、大丈夫。今の装具は、活性炭がついていたりと、ニオイ対策が優秀だという。装具の交換は、週に2~3回が一般的。現在の装具は種類も豊富で、防臭効果や耐水効果もあるため、ニオイの発生や排せつ物が漏れるなどの心配はない。

「だから、普通の人より、おならも臭くないんじゃないかと思います(笑)。医学の発達はスゴイ」

 だが不思議なことに、今でもおなかを下したときや疲れたときなど、まるで肛門が存在するように、幻の痛み(幻肢痛)を感じることもある。

「まるで肛門が存在するかのように、肛門周りがめちゃくちゃ痛くなって、今にも裂けて排せつしそうな感覚になるときがあります。この痛みは、自然になくなるものか、医師にもわからないみたいで……」

次のページ