
小池百合子都知事が「最短で来年5月」と言う豊洲移転を発表した築地市場は、この夏も大勢の観光客でにぎわいを見せた。「豊洲移転と築地再生」の都の方針に揺れる場外市場は、これからどうなっていくのだろう。築地場外市場に本店がある、すしチェーン「すしざんまい」を展開する喜代村の木村清社長(65)に聞いた。
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──8月3日に発生した築地場外市場の火災はたちまち燃え移り、木造の店舗7棟が全焼しました。焼け跡はまだそのままです。「すしざんまい」はどうだったんでしょうか。
火災が起きたところのすぐ近くにお店がありますが、路地をはさんでいたので、うちはギリギリ大丈夫でした。でも、被害に遭われた方は大変でした。
──火元として、人気ラーメン店「井上」の厨房(ちゅうぼう)のコンロ付近の壁が突然発火したのではないかという見方も報道されました。
壁の中が燃えて、井上さんも被害に遭われました。火災の翌日、社長がおみえになり、「ご迷惑をおかけした。ここではもうやっていけないから店をやめます」と涙ながらに謝っておられた。私は「大丈夫だよ。今回はしょうがないんだから、これからもみんなでやっていこうよ。井上さんだって築地の発展に一番貢献したんだから」と声をかけたんですが、相当のショックを受けておられた。ここでは近年にない大きな火災だったので、ほかの業者の方々も私の手を握って、涙を流して「みんなでがんばろう」と言ってくれました。
──築地の場外は老朽化した木造やモルタル造りの建物が並んでいます。ゴチャゴチャした、路地裏の迷路のようなところが魅力の一つともなっています。ただ、今回のように火災になると燃え広がってしまう不安がありますね。
消防の対応もまずかったと思います。消火栓がいくつあったのかも疑問。消防車はいっぱい来たのに、放水しているのは数台でした。それも、トタン屋根の上やシャッターの外側から放水していた。屋根をひっぺがし、シャッターをぶちやぶって消火してほしかった。そうすれば、あんなに類焼せず、短時間で消火できたのではないでしょうか。一つひとつ許可を取ってからでは迅速に動けない。築地場外の消火対策をもう一度見直す必要があると痛感しました。