微小血管狭心症は診断が難しく、原因不明といわれ、苦しんでいる患者は多い(※写真はイメージ)
微小血管狭心症は診断が難しく、原因不明といわれ、苦しんでいる患者は多い(※写真はイメージ)
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 胸の痛みや圧迫感などが起こる狭心症。動脈硬化によるものが知られているが、閉経前後の女性に多い微小血管狭心症は動脈硬化とは関係なく起こる。多様な症状から診断が難しく、原因不明といわれ、苦しんでいる患者は多い。

 微小血管狭心症は心臓に酸素や栄養を送っている冠動脈のうち、直径500μm(マイクロメートル=ミリメートルの千分の一)以下の細い血管の異常によって起こる。

 血管が異常に収縮して一時的に心臓に十分な血液が行き届かなくなる心筋虚血が起こることで、胸痛や圧迫感などの症状が生じる。

 狭心症といえば通常、生活習慣病により動脈硬化で冠動脈が狭くなることが原因で起こる。攣縮(=れんしゅく・けいれん)によって起こる冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症というタイプもある。いずれも太い冠動脈に起こり、中高年の男性の発症率が高いのも特徴だ。

 一方、微小血管狭心症は動脈硬化とは関係なく起こる。閉経前後の女性に多く、30代後半から50代後半までの女性の10人に1人と高い割合で発症する。

 静風荘病院女性外来特別顧問の天野惠子医師は言う。

「主な原因は女性ホルモンであるエストロゲンの急激な低下。更年期前~後に多いのはおそらくこのためでしょう。年齢が若くても月経不順があると起こりやすいこともわかっています。また、冷えや心理的ストレス、睡眠不足などで血管の収縮が起こることもきっかけとなります」

 太い血管と違い、微小血管は心臓カテーテル検査などでも異常が見つかりにくい。また、胸痛以外にも症状が出やすいなどの特徴がある。このため、さまざまな科を渡り歩く患者も少なくない。

 逆流性食道炎や更年期障害、自律神経失調症、心の病などと誤診されることも珍しくないという。

「通常の狭心症の治療に使うニトログリセリンが効きにくいという点も、診断を難しくしています。この病気がアメリカで初めて報告されて30年余りがたちますが、循環器の医師にも病気が周知されていないのです」(天野医師)

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