「たとえ若いときから間をあけないでコンスタントにセックスをしていても、起こります。痛みを感じるようになったら性交時に膣内に潤滑ゼリーなどを塗って、うるおいを補給することも大事なことだと思いますよ」

 ほか、女性は膣萎縮のケアと同時に、骨盤底筋群(骨盤の底にある筋肉)を鍛えていくことも大事だと、前出の増田さんは言う。

「骨盤底筋群は骨盤の底でハンモックのように内臓を支えています。でもこの骨盤底筋群が出産や肥満や加齢でゆるんでくると、子宮や膀胱などが膣をめがけて落ちてくるのです。これを“臓器脱”といいます。臓器脱ももちろん健全なセックスの妨げになりますから、骨盤底筋群のトレーニングを女性は常に意識するようにしましょう。尿漏れの防止にもいいですから」

 前出の喜田院長は家でできるトレーニングとしては「ケーゲル体操」がいいとおすすめする。

「リラックスして、足を肩幅に広げて立ちます。そして5秒ほど息を吸いながら、膣を上げるように締めていきます。そのあと息を止めて、5秒ほど膣を締め続けます。で、5秒かけて息を吐きながら力を抜いていきます。これを数回繰り返すだけでもトレーニングになりますので、ぜひやってみてください」

 実は世の中の多くの女性たちが誤解していることがある。前出の北村さん曰く、

「女性ホルモンが減ってくると性欲はなくなると思っていらっしゃる方、多いですよね。でもそれは間違いです。女性にも男性ホルモンは分泌されています。そして性欲をつかさどっているのは、男性ホルモンなのです。閉経に向かって女性ホルモンが減ってくると相対的には男性ホルモンレベルが高くなり、性欲は強くなるのですよ。これは医学的に根拠のある話です」

 閉経後もセックスしたいと思う女性は決してアブノーマルではないのだ。

「ただ自分の年齢なりのセックスを考えたほうがいいと思います。セックスのときは過呼吸にもなりますし、心悸亢進(動悸)も激しくなるでしょう。1分間の脈拍数は、100はあたりまえのように超えます。これは高血圧や糖尿病などの生活習慣病をわずらっている人などにとっては危険きわまりないことです。“死ぬまでセックス”というフレーズを聞いたことがありますけれど、“死んだら、できないよ”だと私は思います」(北村さん)

 増田さんも、男性の性器を挿入することだけがセックスではないと語る。

「一緒にお風呂に入るとか、抱き合って眠るとか、自分たちが“2人でいられる幸せを感じられること”をそれぞれのカップルが選んでいけばいいのではないでしょうか」

 そう、いくつになっても“女であること”は男性器の挿入にいつまでも応じられることと決して同義ではない。

「年齢や体調をふまえて、いろいろな形のセックスがあっていいと思います。高齢になれば、特にです。見つめ合うこともキスをすることもセックスと、もっと広義に考えてもいいのかもしれません」(北村さん)

 何を選ぶのかは、女性次第だ。(空見田琴加)

週刊朝日  2017年8月4日号