浅田美代子さんが最初に出演したドラマには、本番前にリハーサルではなく“稽古”があった。1970年代に大人気だったドラマ「時間ですよ」。向田邦子さんが書いた脚本を、久世光彦さんが演出し、ベテランから若手まで、錚々たる役者が出演していた。台本だけでも十分面白いのに、稽古を通すことで、話がさらに面白くなっていく。「当時のドラマは、半年続くのが普通で、収録中は、家族より一緒にいる時間が長かった。だから、この世界に入ってすぐ『お芝居っていいなぁ』って思ったし、これからも続けていきたい気持ちも生まれていたんです。それが、思いもかけないところでドラマの挿入歌が売れちゃって……(苦笑)。歌番組に行くと、同世代は多いんだけど、ドラマの現場のようなアットホームな感じとは程遠くて、『なんだか、あんまり好きじゃないな、ここ』って(笑)」
デビューから40年以上が経つが、いまだに“女優”という肩書にはなじめない。どこか、自分にはきらびやかすぎる気がするからだ。
「ストイックに役者一本でやっている方には叱られるかもしれませんが、職業を聞かれたら、“役者”と答えるのが、自分的にはしっくりきます」
そんな浅田さんが、18年ぶりに舞台に挑戦する。「ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~」は、現在放送中のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の脚本を手がける岡田惠和さんのオリジナル戯曲である。