大塚咲(おおつか・さき)/東京都出身で2004年にAV女優としてデビュー。12年に引退し、写真や絵画の分野で活動する。6月30日から7月9日まで神保町画廊(東京都千代田区)で、写真展「me」を開く(撮影/多田敏男)
大塚咲(おおつか・さき)/東京都出身で2004年にAV女優としてデビュー。12年に引退し、写真や絵画の分野で活動する。6月30日から7月9日まで神保町画廊(東京都千代田区)で、写真展「me」を開く(撮影/多田敏男)
この記事の写真をすべて見る

 性犯罪を厳罰化する改正刑法が、6月16日に成立した。刑法が制定されてから、性犯罪についての大規模な改正は初めてだ。強姦(ごうかん)罪の名称は強制性交等罪に変わり、法定刑の下限は懲役3年から5年に引き上げられた。罰則は重くなるが、性犯罪がなくなるわけではない。被害者が声を上げにくい状況も、変わっていないとされる。

 そんななか、大塚咲さん(32)が取材に応じ、15歳の高校生の時に見知らぬ男にナイフを突きつけられ、暴行された壮絶な体験を本誌に語ってくれた。

「私はあの日一度殺された。強姦は魂の殺人と言われるが、まさにその通り。あの日も、それからの日も、自分には未来なんてもうないと思っていた」

 精神的に不安定になり、高校を中退。心の傷と向き合うなか、アダルトビデオ(AV)の業界に入り、多くの作品に出演した。AV女優を引退したいまは、写真や絵といったアートの世界で活躍している。

 壮絶な経験を「よわむし」(双葉社、6月23日発売)という著書にまとめた。学校のすぐ近くで乱暴されたことや、警察はもちろん家族にも明かせなかった心境が、書き込まれている。

「17年ぐらい前のことに向き合っているのに、こんなに詳細に思い出すのかと自分でもびっくりした。もう過去のことでいまは大丈夫だと思ってやり始めたが、書いているとめまいを感じ、心の症状的なものがでちゃった」

 それでも本を出したのは、同じような被害を受けた女性たちに、「私の体験が役に立てれば」という衝動があったからだ。

「本という形にはなったが達成感はない。私が投げたものが誰にキャッチされるのかもわからない。でも、こんなこともあるんだと、何らかのヒントになってくればいいかな」

 性犯罪の被害者は、男性が思う以上に身近にいる。“いたずら”や“痴漢”をされたことがある女性は多い。

「小さいことのように感じるかもしれないが、その人が傷ついてしまったことはレイプと変わりがない。心の傷の反応は人によって違うので、他人にはわかりにくい。『なぜ大声を出さなかったの』などと言われるのを恐れて、被害を訴えられず苦しんでいる」

次のページ