共謀罪法成立や加計学園問題で、支持率を低下させている安倍内閣。ジャーナリストの田原総一朗氏が安倍首相の“ウソ”を指摘する。

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 6月19日、報道各社の世論調査の結果が一斉に報じられた。安倍晋三内閣の支持率は毎日新聞が10ポイント下がって36%。不支持率が44%で、支持と不支持が逆転。共同通信は支持率が10.5ポイント下がり、読売新聞は12ポイント下がった。朝日新聞は6ポイントダウンで、いずれも大きく下げている。

 共謀罪について、委員会の採決を吹っ飛ばし中間報告というわけのわからないかたちで強引に国会の幕引きをしたのに対し、国民の怒りがはじけたのは当然だ。まだまだはじけ方が足りない、とさえ感じる。

 安倍首相はもともと、共謀罪法を成立させるつもりがなかったのではないか。もし本当に共謀罪をつくるつもりならば、なぜ、わざわざトンチンカンな答弁ばかりの金田勝年氏を法相にしたのか。自民党には、もっとしっかりした受け答えのできる議員が少なからずいたはずである。

 共謀罪についての国会審議が始まったころ、私はBS朝日の番組「激論!クロスファイア」に自民党の幹部に出演してもらって、「なぜ共謀罪が必要なのか」と問うた。

 すると彼は、パレルモ条約というものがあって、世界の187カ国・地域が加盟しており、国連加盟国で加盟していないのはわずか11カ国で、先進国では日本だけだ、と説明した。そしてこの条約に加盟していないと国際的なテロリストなどの情報について加盟国と連携ができないのだと言った。恥ずかしい話だが、私はパレルモ条約のことを知らなかったので、そういうことか、と納得してしまった。

 だが、その後わかったのだが、パレルモ条約はマフィアなどの国際経済犯罪の取り締まりが目的で、テロなどには関係ないのである。

 また、安倍首相も金田法相も、法案はテロリストを取り締まりの対象にしていて、一般国民はまったく関係ない、何の迷惑もかけない、と繰り返し力説した。だが、テロリストたちは目印などつけておらず一般国民の間に潜っているわけで、本当に見つけ出そうとすれば、徹底的監視社会になるはずだ。そこを曖昧にしている共謀罪は極めて危ない。

 
 加計学園問題では、内閣府の審議官などが「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと語ったとされる文部科学省の内部文書が流出した。この文書について、当初、菅義偉官房長官は「怪文書のようなもの」と言い切っていた。しかし、それでは対応できなくなり、松野博一文科相は調査するといったが、答えは「存在を確認できなかった」であった。だが、野党とマスメディアの厳しい追及に追い詰められて「再調査」となり、ようやく、「総理のご意向」などと記された内部文書があったことが判明したのである。

 だが、今度は山本幸三地方創生相が「内閣府はそんなことは一切言っていない」と全否定した。そんなことを言えば文科省を刺激するはずで、現に、萩生田光一官房副長官を特定する新たな文書が出てきた。

 それ以前に、前川喜平前文科事務次官が木曽功内閣官房参与(当時)から「今治に獣医学部を新設する話、早く進めてくれ」と要請され、和泉洋人首相補佐官からは「総理が自分の口から言えないから、私が代わって言う」とハッキリ言われた、と語っている。前川氏の発言が事実か否か、証人喚問をすべきである。自民党が拒めば、国民の不信感はいよいよ募るはずである。安倍首相は、なぜそれがわからないのか。

週刊朝日 2017年7月7日号