過疎化は喫緊の課題だ。和歌山県に総本山がある高野山真言宗は、過疎対策に乗り出した。

 きっかけは、日本創成会議が14年に発表した「消滅可能性都市」。全国の自治体のうち約半数が40年までに消滅する可能性があると指摘するものだ。

 全国に約3500ある高野山真言宗の宗教法人のうち、45.5%の寺が「消滅可能性都市」にあることから危機感を持った。

 対策として、四つ提言されている。

 一つ目は高野山真言宗全寺院のうち約3分の1を占める兼務寺院の解消だ。檀家の減少や後継者探しの停滞などの要因から兼務住職が増えている。兼務住職は行事や法務といった日ごろの活動が鈍り、本来の寺院活動に支障が出かねない。日常的に先祖祭祀ができる住職が求められていて、僻地でもくじけない志を持つ僧侶確保のために、一般人にまで門戸を広げることも考えている。

 二つ目は僧侶の育成。寺院後継者ではない在家出身の僧侶が還俗(げんぞく)してしまう実態を変え、脱サラや定年退職などの社会人経験が豊富な人材が過疎地域の住職として受け入れてもらえるような制度設計を巡らせている。

 三つ目は寺院の活性化。寺と檀家のつながりが希薄となり、寺離れは僧侶不信が原因とも考えている。地域住民や自治体、観光業などと連携し、寺を身近に感じてもらうことが重要だ。

 四つ目が都市部に寺院同士の情報集約や相談対応などの窓口を担う情報センターを設置することだ。檀家の移住によって進む離檀を把握し、経済基盤が弱体化した地方寺院のリスク低減の機能を期待できる。

 活動を知る山梨県内の40代の住職は言う。

「60代や70代の団塊の世代が亡くなったら、寺のあり方は様変わりします。特に地方はそれが顕著にあらわれるはずです。今以上に檀家さんからの固定収入は計算できなくなり、お坊さんは食べていけなくなるでしょう。現時点ですでに寺の収入はどんどん減っています」

 寺の大事な収入の一つ、法事でのお布施もすでに収入として計算できなくなっている。

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