漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「陸海空 こんな時間に地球征服するなんて」(テレビ朝日系 火曜23:15~)に登場したディレクターを芸人以上に面白いと絶賛する。

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 春から始まったバラエティーの中で、一番笑ったのはこれ。この番組内の「部族アース」というコーナーだ。芸人のU字工事が世界中の様々な部族に会いに行くという企画。

 芸人が過酷な旅をするロケなんて、正直見飽きてるから。なんてぬるい気持ちで見ていた視聴者の横っつらをはり倒したのは芸人……ではなく番組ロケ班の友寄隆英ディレクターだ。

 もうね、この又吉(直樹)似の男がとんでもないんですよ。まず躊躇がない。巨大カタツムリだろうが、ジャングルの虫だろうが、なんでも口に入れちゃう。

 さらにウィトという果実に美容効果があると聞き、塗りたくる友寄Dに、現地住民も困惑顔。なぜならそれは、入れ墨を入れる時などに使う染料だったのだ。数時間後、異変が起きる。友寄Dの全身が、すみずみまで真っ黒に! その黒さたるや、人間の肌色なんてもんじゃない。似てるといったら万年筆のインクのブルーブラック色?

 川の水で洗っても落ちない。一晩寝てもそのまま。ほんとかどうかわからないが、村人から「一生落ちないよ」と宣告されてしまう。もうこの時点で、友寄Dに目が釘付けだ。

 
「どうやって生きていこう、今後」とつぶやく彼だが、なんだかそんなに深刻そうでもなく、ナス色のままゲテモノをかっ食らう。芸人の場合、ヤバい状況に陥ると意識せずとも大仰なリアクションを取りがちだ。けれど友寄Dのテンションはフラットで、他局(TBS系)の「クレイジージャーニー」に出てくる冒険家たちに近いノリ。

 とは言え、クレイジーな冒険家たちには、一応目標や志がある。見たこともない光景を撮影するとか、誰も成し遂げてない挑戦をするとか。だが、そんな志もなく(強いて言えば面白い番組を撮りたい?)、真剣に無茶しちゃう友寄D、クレイジーすぎないか。

 そんなナス色男のおかげで、本来主役である芸人のU字工事や、他コーナーのサンシャイン池崎が霞む霞む。今もナス色で旅を続ける友寄D。辺境の部族を紹介するはずが、行く先々の住民をナス色で爆笑させる番組になりつつある。

 先の読めない展開で、いつしかバラエティーがドキュメンタリーに。帰国の折にはぜひ「クレイジージャーニー」に出演して、松本人志にいじってもらいたい。

週刊朝日 2017年6月16日号