都内のアパレルメーカーに勤める、入社2年目の桜木洋子さん(仮名・23歳)。入社1年目の9月、初めての夏休みに、ボーナスを使って友人とイタリア旅行を予約した。「せっかく行くなら」と申し込んだツアーは8日間。通常の夏休み3日間+週末の5日間では休みが足りない。それならばと、5日間の有給休暇を直属の上司に申請した。

 今でも忘れられないのが、申請を受け取ったときの上司の表情だ。あぜんとした後、上司は苦笑いをしながら「有給休暇は、1年目から取るものじゃない」と申請を突き返した。桜木さんは心の中で思わずこう叫んだ。

「え? だって入社したときには、“休みはしっかり取れ”って言ったじゃん!」

 周囲に迷惑をかけないよう、休みの前には猛スピードで仕事を進めようと張り切っていたのに。休みが取りやすいという環境も入社の大きな動機だったのに──。反発心に火が付き、収まらず、こう言い放った。

「せっかく与えられた初めての有給休暇なのに、休みたいときに休めないんなら、辞めます」

 その瞬間、上司の苦笑いは消え、表情がこわばった。「取得OK」と申請が通ったのは、その翌日のことだった。桜木さんは言う。

「それから2回、残りの有給休暇を取得して、台湾と韓国にも行きました。2回目からは、上司も半ば諦めモードで認めてくれるようになった。上司からすれば、私はたぶん、異次元の人種。私は取れる休みはしっかり取って、旅行もしたいし勉強もしたい。やりたいことがいっぱいあるんです。今年ももちろん、有給休暇は全て使う予定です」

“異次元の人種”と接する中間管理職からは、戸惑いの声が相次いでいる。あるサービス業の男性(51)は、こう嘆く。

「今の新入社員は、まだ仕事も覚えていない半人前なのに、自己主張だけは一人前。ですが、時代が時代なだけに、休みたいという声を真っ向から否定することもできない。どうやって歩み寄ればいいのか」

 若手社員が定着しないことも、人手不足に悩む企業には大きな懸念材料だ。

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