プロバスケットボール「Bリーグ」の初代王者をかけた5月27日のチャンピオンシップ決勝で、バスケ界のスターの田臥勇太率いる栃木ブレックスに惜敗した川崎ブレイブサンダース。川崎は強豪クラブとしても知られるが、実は喜んでばかりいられない。
ユニホームの胸元にあるスポンサー名は「TOSHIBA」。川崎は1950年に創部され、昨年9月にBリーグが始まる前はNBLに所属し、「東芝神奈川」として親しまれていた。その東芝は原子力事業の失敗で解体の危機に直面し、バスケなどスポーツ事業に資金をまわす余裕はなくなりつつある。
川崎はNBL時代に2回優勝し、全日本総合選手権でも3度の優勝経験がある。いまも選手層は厚い。世界最高峰の「NBA」でのプレー経験があるニック・ファジーカスや、日本代表としての経験が豊富な辻直人らがいる。Bリーグ初年度はぶっちぎりでチャンピオンシップ出場を決めた。平均入場者数の伸びは昨季比2.44倍と、リーグ1部(18チーム)でトップだった。
強豪を支えてきたのが東芝の資金力だ。プロスポーツの運営に詳しい早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦教授(スポーツマネジメント)はこう話す。
「強くなるにはいい選手の獲得が必須だが、年俸は数千万単位になる。川崎クラスなら運営に最低でも5億~6億円は必要でしょう」
過去にはいすゞ自動車や熊谷組などにも実業団クラブがあったが、バブル崩壊で相次いで廃部に追い込まれた。東芝はそうした流れの中でも、選手を社員として雇うなど、資金をかけてチームを育ててきた。
だが東芝の厳しい現状では、メインスポンサーを辞めざるを得ない可能性もある。原田教授は指摘する。
「次のメインスポンサーが決まるまで、年俸カットなどの措置が取られるかもしれない。有名選手が流出するリスクがある」
クラブの資金繰りが苦しくなると、Bリーグに参加するライセンスが取得できない恐れもある。東芝の広報は、川崎を含む自社のスポーツチームについて「今後のことは何も決まっていない」とする。
70年近い伝統を誇るクラブは正念場を迎える。
※週刊朝日 2017年6月9日号