作家・室井佑月氏は、安倍晋三首相に異を唱える自民党内の勢力に期待する。

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 安倍首相は日本会議主導の集会で、2020年に改正憲法の施行を目指すと、ビデオメッセージの中で述べた。読売新聞の単独インタビューでも、おなじことをしゃべった。もちろん、そのことは国会で野党議員に突かれた。あの人はなにが悪いかわからなかったみたいだ。「(私の考え方を知りたいなら)読売新聞を読め」と言い放った。

 国会軽視もいいところ。あれが首相なんて怖くないか?ってなことを感じたのは、あたしだけじゃないみたいだ。

 あの人に異を唱える議員が自民党から出て来た。

 石破茂議員は、来年秋の「総裁選で安倍首相と改憲を論戦する」と週刊朝日のインタビューで“宣戦布告”。岸田文雄外相も岸田派の会合で、安倍首相の9条改正宣言に対して、改正は当面不要と明言した。

 衆院憲法審査会の幹事を務める船田元(はじめ)議員も、BSの番組で、改憲の国民投票と、国政選挙とを同時投票することについて反対だと堂々と語った。

 そして5月16日、自民党の村上誠一郎議員や野田毅議員、野田聖子議員など、安倍政権に批判的なスタンスをとる実力派の議員が中心となった「反アベノミクス」の勉強会が開かれた。

 遅いよぉ……じゃなくて、よくぞ立ち上がってくれました! もうあたし、安倍首相じゃなかったら、誰が頭でも構わない気がしてる。

 国会答弁、外交、あの人のほとんどがデタラメで出来ているんじゃなかろうか。上手いのはマスコミの懐柔だけでさ。

 なぜに、19日、衆議院法務委員会の共謀罪・強行採決がNHKで流れなかったのか? ニュースで言い訳程度に流したものの、大事なそのときに流れていた番組は、洋服のリフォーム、ご当地グルメ。公共放送、どうなってるんだ?

 憤っておったら理由がわかった。安倍首相が委員会の場にいなかったからだとか。彼がいなきゃ、共謀罪の強行採決でさえ、NHKはさほど大事な案件じゃないという判断みたいだ。

 
 そして、安倍ちゃんについては、おなじ日に開かれた「“未来のための公共”金曜国会前抗議」の演説の中で民進党の小西洋之議員が、こんなことを言った。

「今日、強行採決の委員会の場にいるはずなのに、いなかった政治家がいます。安倍総理です。自民党は『安倍総理を出席させるから委員会を開かせてくれ』。『採決する』とは言わないんです。ただ『安倍総理が出席する委員会を開かせてくれ』と、今週になってからずっと言っていた。その委員会を委員長の強行によって開いたんです」

「なんで安倍総理、来ないんですか。逃げたんです。朝日新聞をはじめ、新聞社がいま追及している加計学園の問題、あれを委員会の中でやられるのが厭(いや)だった。そして、答えたくても答えられない共謀罪。逃げた、それが安倍総理の実態です」

 卑怯なり、安倍晋三! このまま永遠に逃げきれると思うなよ。

週刊朝日  2017年6月9日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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