向井理さんが祖母・芦村朋子さんの手記の映画化を考えたのは7年前のこと。祖父・吾郎さんとの出会いや、戦中戦後の混乱期を家族で乗り越えた日々がつづられていた。
「手記を客観的に見た時、実話なのにドラマチックでメッセージ性もあり、人の心に刺さると思いました。小津安二郎さんのような昭和の家族愛を描いた映画が好きで、台詞よりも雰囲気のほうが心に残ると思っているんです」
そんな思いを形にした映画「いつまた、君と~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」は、向井さん演じる吾郎さんが33歳の時から始まる。
「伯父や母には吾郎の影響があると思えるところがあり、“受け継ぐ”ってこういうことなのかもと感じました。映画中の祖父と同じ30代になり、バトンが回ってきたような気がしています」
映画化が進む間に、向井さんも結婚し、子どもが誕生した。
「息子が僕の背中を見ていると感じることがあります。変なことはできないし、生き方や考え方も親の影響を受けるだろうから、気を付けないといけません」
家族を持つ立場となり、祖父の経験を追体験できたことに感謝しているという向井さん。
「家族の形はいろいろあるけれど、どんな状況でも楽しいという感情を味わい、つらいことも一緒に乗り越えていくものだと思うんです。中には家族にしか支えられないものがあるから、僕自身もそういったものをしっかり作っていきたいと思います」
※週刊朝日 2017年5月19日号