意外とよく登場する動物はニワトリ。昭和の時代、ニワトリを飼う家庭は都会でも珍しくなかった。幼稚園や小学校でも飼育され、読者に身近な存在だった。

 ちなみに「お魚くわえたドラ」は原作にも何度か出てくる。そのうち一度は、動物愛護週間だったので、魚屋が泥棒ネコを見逃してやるのだが、ネコは「スリルがないてえのもはりあいがない」と嘆く。

 長谷川町子美術館学芸員の橋本野乃子さんは、作品についてこう語る。

「原作は、何げない日常の中で見過ごしてしまう、小さな幸せに気づかせてくれる。登場人物の誰かに自分を重ねたり、家族の中にその姿を見いだしたり、おのずと共感してしまう。知れば知るほど長谷川町子の魅力にとりつかれますよ」

※週刊朝日臨時増刊号「サザエさん 2017春」(税込み400円)が4月25日に発売されました。原作のおもしろさを再発見できる傑作約300作品を収録しています

週刊朝日  2017年5月5-12日号