千葉県の女児死体遺棄事件で逮捕されたのが保護者会長だった衝撃は、PTA関係者にまで波及している。悪意があれば、保護者会やPTAの役員らが立場を利用できる恐ろしさが浮き彫りになったからだ。「過剰な負担」か、それとも「他人任せのリスク」か。保護者のジレンマを取材した。
東京都内の小学校で4月からPTA会長になった30代の女性は、前任者からの引き継ぎの際、あぜんとした。手渡されたファイルとデータには、同校の全校児童とOBやOGに及ぶ計10学年分の住所、家族構成、携帯電話番号、メールアドレスなどの個人情報。しかも、30人以上いる役員全員が受け取った。毎年1年間、各家庭で管理し、後任に引き継ぐことになっている。だが、個人情報の取り扱いに関する説明は一切なかったといい、「悪用しようと思えば、いくらでもできる仕組みだと感じました」。
PTA役員の経験がある埼玉県の女性(34)は閉口する。「子どもが通う学校の名簿には、離婚調停中、保護者同士再婚した、難病を患っているなど、各家庭が役員を逃れるために申告した事情が子細に記されていました。しかも、PTA関係者は全員閲覧できました」
あらゆる情報が手に入る「特権」が与えられるPTA役員。しかし、無償の仕事の多さなどから、自ら手を挙げて引き受ける人は少数派だ。事件が起きた千葉県松戸市でも、被害にあった女児と同じ学校に子どもを通わせている保護者の女性(37)はこう語る。
「(容疑の)保護者会長は立候補。みんなやりたくないので、どうぞどうぞという感じだった」
容疑者は通学路で毎朝のように見守り活動に参加し、学校にも自由に出入りしていた。警察は被害者と面識があったことを把握しているという。「保護者会長」の立場を「悪用」して、被害者の普段の行動を把握し、信頼を獲得していたとしたら……。
小誌の取材でわかったのは、人望があるとの声があまり聞かれない容疑者が、熱望して、2期目も会長に立候補していたことだ。