「働き方革命実現会議」に出席した安倍首相 (c)朝日新聞社
「働き方革命実現会議」に出席した安倍首相 (c)朝日新聞社
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 安倍政権が推し進める働き改革の裏で急増中の「時短ハラスメント(ジタハラ)」。 労働時間短縮にまつわるハラスメント(嫌がらせ)を指す新しい造語だ。多くの企業が時短に踏み切る昨今、時短を強要しプレッシャーを与える行為が問題視されている。

 実際、時短に取り組んでいる企業は、どのような工夫をしているのだろう。

 伊藤忠商事は、13年10月から「朝型勤務制度」を導入している。20~22時の勤務を原則禁止、22~5時の深夜勤務を禁止とし、5~8時の早朝勤務には深夜勤務と同等の割増賃金を支給。軽食も無料配布するというものだ。導入3年後の成果として、月平均残業時間を15%削減(導入前比)している。

 大和証券は07年から19時前退社を励行。所属長が部員の労働時間をリアルタイムで一覧できるシステムを導入し、業務の割り振りなどをコントロールしている。また、健康管理時間、超過勤務時間を明示することで、社員の残業削減への意識向上を図っている。

「トップの強いリーダーシップのもと取り組みを開始して以来、その趣旨を継続的に社員に発信してきました。10年間、発信し続けてきたことで、今では19時前退社が社内で深く浸透しています」(同社広報部)

 介護事業を支援するセントワークスでは、12年にトップが「ワーク・ライフバランスプロジェクト」の開始を宣言。以後、労働生産性の向上や業務改善、コミュニケーションの活性化に取り組み、1年弱で残業時間を半減させた。ユニークなのは、第3水曜日の「必達ノー残業デー」のルール。残業する人は、恥ずかしいマントを着用するか、「意識の御旗」という派手なのぼりを机上に立てなければならない。

「こういった取り組みを地道に続けてきた結果、何が変わったかと言うと、一番は風土です。帰ってもいい雰囲気がすっかり定着したことで、子育て中の社員などが『働きやすくなった』と言っています」(同社人事サービス部)

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