夫:胆石で倒れたんです。胆のうの手術をして、そこから2年くらい体調が悪かった。

妻:疲れと、ストレスもあっただろうね。

夫:あちこちに炎症が起きて、逆流性食道炎にもなって。吐き気と痛みが1年以上続いたんです。人前に出ているときは忘れているんですけれど、仕事が終わるとグッタリ。吐き気をこらえながら家に帰って。

妻:家ではずっと寝てた。

夫:体重も10キロ以上減って、「これ、いつまで続くんだろう」って。今思うと彼女もすごいストレスだったと思います。

――オーガニック食材に目覚めた夫は徐々に回復、13年にはすっかり体調が元通りになった。翌14年には第3子も誕生した。

妻:私、10年に、1回流産してるんです。そのことがやっぱり気になっていた。年齢的に迷いもあったけれど、どうしても「もう1人」という思いがあって。

夫:玲子には相当なショックだったと思う。1年くらいは、よく泣いてたよね。あのころがお互い、人生で一番つらい時期だった。僕はあの時期を乗り越えて、悩んだり苦しんだりしている人の気持ちが、以前より少しわかってきた気がします。

妻:いまは下の子がかわいくてしかたない。二人で写真を見せあって「かわいい!」って言ってます。

夫:ちょっと病的だよ。完全におじいちゃん、おばあちゃんのスタンス(笑)。

――体調の不良や心の変化は、書にも表れるものなのだろうか。

夫:もちろん表れると思います。書道って単なる線の集合体だから、書き手の気持ちがよりストレートに出るんだと思う。

妻:私みたいな一般人にはわからなくても、見る人が見るとわかるみたい。

夫:玲子だけですよ、僕の書に意見を言うのは。「やりすぎ」とか「調子に乗りすぎ」とか。

妻:そんなにハッキリとは言ってないけど?(笑)

夫:忙しくなった時期に「もうちょっと読めるようにしなきゃ」って言われたのを覚えている。「ええ~?」とも思うけど、「そうか」って考える。僕も確信持ってるわけじゃない。玲子は唯一、僕に意見をしてくれる人だから。

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