森友学園の理事長退任を表明した籠池泰典氏。証人喚問が実施されることになったが、ジャーナリストの田原総一朗氏は籠池氏の態度が変わった理由を推測する。
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森友学園問題は、まるで国民の疑惑をかき立てるのをもくろんでいるかのように、次から次へと信じられない事柄が飛び出してくる。
たとえば稲田朋美防衛相は国会で、森友学園の弁護士を務めたことはまったくない、と答弁していた。だが、稲田氏が学園側の代理人弁護士として大阪地裁に出廷していた記録が示されると、一転してそれを認めて謝罪した。「忘れていた」というのが理由だったが、そんな言い訳が通用すると考えているのだろうか。
稲田氏だけでなく、安倍晋三首相も昭恵夫人も、森友学園が幼稚園の園児たちに毎朝「教育勅語」を唱えさせているのを、とても良いことだと高く評価していた。
私は小学校のとき、「教育勅語」を暗記させられた。その核は「一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」という部分で、もし戦争になれば、国民は生命を懸けて戦い、天皇の国を繁栄させるために全力を挙げよ、と強調している。当時の日本の戦争とはパリ不戦条約違反の侵略戦争だった。だが、戦争に反対すれば警察に逮捕された。拷問で命を失った人も少なからずいる。そうした侵略戦争のためであっても命を懸けて戦え、というのが教育勅語なのである。少なくとも安倍首相や稲田防衛相は、こんなことはわかっているはずだ。それでいて教育勅語を高く評価するとは、どういう神経なのか。この国を戦前の状態に戻すべきだと考えているのか。
ともかく謎が多すぎる。安倍首相は自分も妻も小学校認可や土地購入には一切かかわっていないと力説しているが、ならば、全野党が要求する籠池泰典氏の国会招致に応じるべきだ。でなければ、招致するとよほど都合の悪いことがあるのか、と疑わざるを得なくなる。共同通信社が3月11、12の両日に実施した世論調査では、国有地払い下げの経緯に対して、「政府の説明が十分だ」とする回答は5.2%にとどまり、「十分と思わない」が87.6%に達している。国民のほとんどが、強い疑念を抱いているのである。
さらに、不可解な事態が生じた。籠池氏は9日に大阪で大勢のメディアに囲まれ、4月の開校を認めないとした大阪府への怒りをぶちまけ、断固戦う、と繰り返した。だが、なぜか翌日には認可申請を取り下げ、籠池氏自身が森友学園の理事長を辞めると表明したのである。断腸の思いだとも言った。
たった1日で、いかにも意志が強そうな籠池氏の姿勢が一変したのはなぜか。実はこの間、籠池氏が上京していたという話があり、多くのメディアが動いていた。彼らは籠池氏が財務省か国交省に来るのではないかと張り込んでいたが、いずれにも現れなかった。私は、どこかで強い影響力のある政治家と接触し、姿勢を変えざるを得なくなったのではないかと推測している。その政治家はほぼ推測できるが、いったい、どんなことを言われたのだろうか。
※週刊朝日 2017年3月31日号