呼吸の変化で健康になるとして、近年、注目を集めているのが「超高性能」マスクを使った健康法だ。マスクの高性能フィルターを通すと呼吸が深くなり、インナーマッスルが鍛えられ、酸素が体の隅々まで行きわたり、体質改善も期待できるという。
超高性能マスクに注目が集まるきっかけは、フィギュアスケートの羽生結弦選手だ。2015年3月、世界選手権に出場するために中国・上海空港に降り立った羽生選手がつけていたのが、愛知県の中小企業「くればぁ」の超高性能のメッシュ加工されたスーパーマスクだった。
「清浄度レベルが保たれるクリーンルーム用エアコンに使用されるフィルターを縫い付けた7層構造のマスク。フィルターの網目は0.1ミクロンで、粒子状物質(PM)2.5や花粉、ウイルス飛沫を99%カットすることができる」
と同社の中河原毅社長は性能を説明する。
もともと気管支が弱い羽生選手は、リンクで気管支に悪い冷たい空気を吸い込まないようにするために、リンクでの練習時もマスクを愛用。上海での大会は、大気汚染対策に、と羽生選手のトレーナーが注文し、使用していたのだという。
だが、マスクの超高性能フィルターは思わぬ視点から注目を浴びた。昨年6月に、「林先生が驚く初耳学!」(TBS系)は、ダイエット効果があるマスクとして紹介したのだ。こうしたマスクをすることによって呼吸が深くなるからだ。
くればぁ社と共同でマスクの研究開発にあたる、間柴正二・間柴医院院長(消化器科)が呼吸とダイエットの関係を説明する。
「健康な人が1日に呼吸で消費する熱量は350キロカロリーだと言われています。しかし、呼吸器系の病気を患う患者さんは、皆さん非常に痩せています。というのも『努力呼吸』と言って、呼吸にインナーマッスルや腹斜筋などいろいろな筋肉を使う。通常の5~6倍のカロリーを要するのです」 この「努力呼吸」を健康な人の予防医療に応用できないかと、間柴医師らは考えた。ダイエットは、高血圧や糖尿病、メタボリック症候群など生活習慣病に有効なのは言うまでもない。