──避難計画は?
「安全な避難計画は、事故原因と健康への影響の検証を考慮して作らなければなりません。一番困るのは、パニックが起きて大渋滞が起きることです」
──検証は数年かかる?
「それぞれの項目を検証し、分野ごとにシンクタンクやNPOなどに調査を依頼すれば、通常はそのくらいかかるのではないかと思います。2、3年はかかると言うと驚かれますが、むしろ、事故後こうした検証をしてこなかったことこそを反省すべきです。不幸にも原発には100%安全という“安全神話”がありました。電力会社は、『原発は絶対に安全だ』と絶対にあり得ないことを言ってきた。半信半疑ながら多くの人がそれを信じていたが、事故が起きてその安全神話は崩壊した。では、事故の危険性はどのくらいで、どう対処したら良いのか、行政は、その問題にいままで真面目に向き合ってこなかった」
──電力会社はいまも地球温暖化対策や経済合理性などで原発は有効と言うが。
「それは筋違いな話だと思います。温暖化対策というのなら、ほかにいくらでも施策が考えられます。風力も太陽光も技術革新が進んでいます。国内だけでなく、海外で自然エネルギーを開発して売るという方法だって考えられます。LEDの普及で日本の電気需要も減っています。論理的につながらない話で、別次元の問題を混同しないでほしいと言いたいですね」
──経産省の試算では、福島第一原発の事故処理費は21.5兆円にまで膨らむ。柏崎刈羽原発6、7号機を稼働させれば年間2千億円の利益になるとされ、事故処理費の原資としたい東電側の意向もうかがえる。
「その理屈も通りません。賠償の話と、今後いかに安全に動かすかはまったく別の議論です。どのみち賠償は国の責任でやっていくのでしょうから、そういった話をするのであれば、例えば海外で援助している1千億円、2千億円をお使いになればいかがですか、と言いたくなってしまいます」
──事故処理費が電気料金の値上げで国民負担になっていることを引き合いに出されたら?
「電気料金に上乗せしたのは政府の判断です。別の手段だって考えられたのにあえてそうしたのですから。それは関係ありませんよと言わせていただきます。再稼働するか否かは最終的に国民が判断することです」