“新潟ショック”と言われた脱原発派知事の誕生から3カ月──。米山隆一・新潟県知事は1月5日、初めて東京電力ホールディングスの会長、社長と会談し、「安全性の検証がされない限り、柏崎刈羽原発再稼働の議論はできない」との意向を伝えた。現在の心境を聞いた。
──安倍政権は原発再稼働に突き進んでいる。
「むやみにケンカはしたくないので、政権批判は控えているのですが(笑)。でも、『福島第一原発の事故の原因解明』『事故による住民の健康への影響』『柏崎刈羽原発での事故時に安全に避難できる計画』の3点の検証を私が進めていることは、政権に対する一種のアンチテーゼではあると思います。いまは立ち止まって考えるべきではないですか、と。現状では住民の安全を確保できない、と苦言を呈するのが知事の責務であり権限です。ただし、立場の違いは違いとして、議論の共通の土台を作る必要があると思っています」
──東電との会談で得られた感触は?
「落ち着いた話ができたと思います。こちら側の意向はきちんと伝えられましたし、東電側からも住民の安全を第一に考えるというお話をいただきました。また、検証にも協力してくださるとのことでした」
──検証のポイントは?
「福島原発事故について、国会、政府、東電、民間の四つの事故調査報告書が出ています。事故原因の技術的な問題について意見の違うところもあるので、しっかりと検証していきたいと思います。健康面で言えば、例えば子どもの甲状腺がんが多発しているという問題では、学術的な意見が分かれています」
──知事は医師でもある。増えていると思うか?
「双方の見解にそれぞれ論拠があって、正直わかりません。ただ、事故との因果関係を否定するのは早計です。スクリーニング効果で甲状腺がんの発見が増えているというのであれば、他県でも調査して比較すれば、わかるはずです。それこそ、福島と新潟は隣県で気候条件も似ている。いい比較対象になるはずです」
──2007年の新潟県中越沖地震では、柏崎刈羽原発の配管などが損傷した。福島は想定外の津波が主な事故原因とされている。
「福島も地震によってある程度は壊れた可能性があります。国会の事故調では、地震で配管が損傷したのではないかとの指摘もあります。不幸な事態が次々と連鎖的に起きて、あの苛酷(かこく)な事故につながったということを、われわれは教訓にすべきです」