病が発覚したのは、研究の一環で作ったNPO法人が認証を受けて、ようやく立ち上がり、「さあここから」という時期だった。Kさんとしても思いもよらなかったという。
「大腸がんが見つかったんです。手術、入院で仕事は休んでいる状態です」
現在は自宅に戻れているものの、通院しながら化学療法を続けている。この先、教壇に立つ機会はおそらくもうないと、Kさん自身が自覚している。
「勤労意欲は今でもあります。働くことで社会とつながれるし、向上心も持てると思います」
いま「自分は大丈夫」と自信を持っていても、明日にはどうなっているかわからない。それも踏まえて、Kさんは、年齢ではなく、その時々の個人の健康や意欲次第で現役かリタイアかを選択できてもいいのではないかと考える。
「年齢で区切るのはある種の差別です」
前出の松本氏も話す。
「年齢だけ上げても、統計上のことで国民にメリットは少ない。受け入れる社会の仕組みを整備していけるかが重要です」
※週刊朝日 2017年2月3日号より抜粋