潜在患者数は1280万人ともいわれる骨粗鬆症。最初に手首が骨折しやすくなり、次に椎体(背骨)、腕、大腿骨近位部(太ももの付け根)と続き、「骨折ドミノ」「骨折の連鎖」と呼ばれる。大腿骨近位部を骨折すると、日常生活動作(ADL)が低下して寝たきりや認知症のリスクが上昇。死亡率も高くなる。将来的には2.5人に1人が大腿骨近位部骨折、つまり死のリスクが高い骨折を起こすと見られている。しかし、昨年発売された新薬に、治療や通院の負担軽減が期待されている。
今後、治癒率の上昇につながるのではと期待されているのが、2016年に発売されたビスホスホネート薬の新薬「ゾレドロン酸」(商品名リクラスト)だ。従来の薬では、毎日、週1回、月1回、長くても半年に1回の間隔での投与だったが、この薬は年に1回投与すればいい。静脈に注射するため、有効成分が100%患部に届けられるとされる。すでに世界115カ国以上で承認されており、ようやく日本でも承認された形だ。
国内での臨床試験に関わった沖本クリニック院長の沖本信和医師は、広島市内のほか、広島県呉市にある高齢化率60%を超える過疎の島でも治療をおこなっている。
新薬のメリットとして、「年に1回の投与になれば、治療や通院の負担が減り、生活スタイルに合わせて治療が進められる」と強調する。
「骨粗鬆症財団実態調査ワーキンググループ」がおこなった調査「大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療薬使用状況」によると、5099人の対象者のうち、未治療が最も多く45%、半年~2年以内終了が23%。2年以上継続しているのは、わずか32%だった。
また、沖本医師が「骨粗鬆症治療中断の理由」を調べたところ、「他疾患の発症・増悪」と「治療連携ミス」が半数以上だった。後者は、骨粗鬆症の治療を受けていても、たとえば脳梗塞で急性期病院へ入院し、そこから回復期リハビリ病院へ移った場合、骨粗鬆症の治療がスムーズに継続されない場合をいう。