超高齢化社会が到来した現代。「お金」や「歴史」の著書が多数あるライフネット生命保険代表取締役会長 出口治明さん(68)は、60歳からの「学びのすゝめ」を説きました。
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60歳とは、どのような年齢でしょうか。現状認識から始めたいと思います。「60歳の地平」を正確に把握するのです。
90歳まで生きるとすると、残り30年あります。人間は、どれだけ物覚えが悪くて、やる気がなくても、3年勉強したり、先生の元に通ったりすれば知識は身につくものです。「3年で師範の免状がもらえる」と考えれば、30年で10のことに挑戦できる。10もあれば、失敗も怖くないはず。
私の友人はある日、知人に誘われて句会に行ってみた。主宰する先生の孤軍奮闘する姿を見て、「何とか助けたい」と協力するうちに、今では俳句の雑誌の編集長をしています。文学にまったく興味がなかった人がですよ。メールで私に自信作を送ってくるほどです。
古代ギリシャの長編叙事詩の「イーリアス」と「オデュッセイア」が急におもしろく感じて、カルチャーセンターでギリシャ文学を勉強し始めたという知人もいます。金融機関出身の、別の友人は定年後、NPOでCFO(最高財務責任者)をやっています。最近の社会問題を勉強するきっかけになっているようですね。
やりたいこと、やれなかったこと、ありませんか?すぐ、やりましょう。あるいは、NPOなど現役世代の活動を手伝ってみる。きっと勉強が楽しくなります。
年齢は関係ありません。若い人にも、2種類の人がいますね。合コンに誘われて、「身元がわからない人の集まりだったらどうしよう」と躊躇(ちゅうちょ)する人と、「誰が来るかわからないけど、すてきな異性に会えるかも」とサッと参加する人です。
時間はあります。うまくいかなくてもダメ元。定年後は「悠々自適」という社会通念を捨てて10のことを勉強してみてください。世界が開けますよ。今が一番若いのですから。(談)
※週刊朝日 2017年1月20日号