宝塚歌劇団星組元トップスター、“レジェンド”の登場です。退団から約1年半、現在は舞台を中心に活躍される柚希礼音さん。スタイルの良さや立ち居振る舞いの美しさには、作家の林真理子さんもうっとり。宝塚時代の秘話を伺いました。
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林:宝塚の舞台を見に行くと、最後に音楽が一瞬やんで、トップさんが階段を下りてくるじゃないですか。あの瞬間って神々しい感じですよ。気持ちいいだろうな。
柚希:宝塚ならではですよね。苦労して一緒に舞台をつくった仲間が迎えてくれるので、とってもうれしいです。
林:下級生のときは、やっぱりあの羽根をつけることに憧れちゃいました?
柚希:それが私、あんまりわかっていなくて……。
林:そうか。柚希さん、受験を決めるまで宝塚を見たことなかったんですよね。ご両親も「宝塚を受けなさい」と言いつつ、実は見たことがなかったという。
柚希:そうなんです(笑)。私はクラシックバレエをしていて留学しようと思っていたんですが、両親は娘を一人で外国に行かせるのが不安になって、宝塚受験をすすめたんだと思います。それに私は背も高いし、肩幅も広いし、手も大きくて筋ばっていて、バレエの世界ではダメな外見だったんです。ところが宝塚の男役ではそれが全部よしとされた。向き不向きってあるんだなって思いました。
林:クラシックバレエをやめて、前衛のコンテンポラリーダンスとかに行く人もいますが、そういう道は考えなかったんですか。
柚希:「クラシックバレエ以外はしたくない」と、頑なに思っていたんです。小中学校のころから「宝塚に向いている。受けたら?」としょっちゅう言われて、もう「またか」という感じで。言われれば言われるほどイヤになっていました。宝塚の舞台を見たこともなかったのに。
林:食わず嫌いだったんですね。
柚希:実際に見てみたら、想像していたものと違いました。初めて見たのは真矢みき(現・真矢ミキ)さんの「失われた楽園/サザンクロス・レビュー」というお芝居とショーの2本立てだったんですが、とても現代的で、ダンスも素敵で、自分もやってみたいと思ったんです。そして実際に宝塚音楽学校に入ったら、授業が全部芸事だったんです。そこでバレエ以外のダンスを知ったことで、「私、クラシックバレエだけがしたかったわけじゃなかったんだ」と気づきました。