環境相の諮問機関である中央環境審議会の動物愛護部会は、12年に動物愛護法を改正するにあたり、「現状より細かい規制の導入が必要」とする報告書を提出していた。同省は、今夏にも見直し議論が始まる次の法改正が行われる前に、飼養施設規制の導入に道筋をつける方針だ。
これに対し、ペット業界は警戒感を強めている。
業界の試算だと、英国並みの規制が導入された場合、繁殖業者らが大型のケージを導入するのに総額17億円以上の設備投資が必要になるという。経営環境が悪化し、子犬や子猫の生産能力が衰えることを懸念する関係者が少なくない。
16年2月にはペット関連の業界団体を横断的に組織した新団体「犬猫適正飼養推進協議会」(会長=石山恒・ペットフード協会会長)が設立された。関係者は「ロビー活動のための新組織だ」と明かす。業界をあげて規制導入に対抗する狙いがあるとされる。
独自に入手した、16年6月に同協議会が作成した資料によれば、ペットフード協会、全国ペット協会など10団体と業界関連企業6社で構成。各団体・企業で計約3千万円を拠出して運営資金にしている。
海外の犬猫に関する法規制を翻訳したり、国内のペット店や繁殖業者の実態調査をしたりし、独自の「適正飼養指針」を作るのが目的とされる。資料には「環境大臣への説明」などの文言もあり、早ければ今冬にもロビー活動を始める計画のようだ。
業界側がこうした活動に力を入れるのは、過去の“成功体験”があるためだ。12年の動愛法改正の際には、幼い子犬や子猫を8週齢(生後56~62日)までは生まれた環境から引き離さないための「8週齢規制」の導入が検討された。この際、業界側は「自主規制していて、45日齢まで引き離していない」などと主張し、導入に抵抗した。その結果、米英仏独などで実施されている8週齢規制よりも低水準の「45日齢規制」を経過措置として(16年9月からは「49日」)改正法に盛り込むことに成功したのだ。