誰もが知る名作、実は評価が分かれている?(※イメージ)
誰もが知る名作、実は評価が分かれている?(※イメージ)
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 “サスペンスの巨匠”として名高いヒッチコック。その創作の秘密をひもとくドキュメンタリー映画「ヒッチコック/トリュフォー」が公開された。あの有名監督のお気に入り作品や、映画に仕掛けられた工夫など、ヒッチコックを楽しむためのヒントがいっぱい。一部をご紹介しよう!(ライター 中村千晶)

■「断崖」(41年)の、あの印象的なシーン。その仕掛けとは?

「断崖」は「夫が自分を殺そうとしているのでは?」と疑念を抱く妻(ジョーン・フォンティーン)を描いた作品。夫(ケイリー・グラント)が妻にミルクを運んでくるシーンが印象的だ。妻はそれを見て毒入りだと疑う。ヒッチコックは白いミルクを際立たせるため、グラスの中に豆電球を仕込んで撮影したという。

■ジョージ・ルーカスだけじゃない!影響を受けた意外な監督10人

 フランシス・コッポラ、ブライアン・デ・パルマ、スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスら多くの監督に影響を与えたヒッチコック。本作ではデビッド・フィンチャーら10人の監督がヒッチコックを語っている。意外なところでは「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」のウェス・アンダーソン監督や「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイター監督もヒッチコックファン。日本からは黒沢清監督が登場している。

■誰もが知る名作、実は評価が分かれている?

 デビッド・フィンチャー監督とマーティン・スコセッシ監督のインタビューでは「めまい」の評価が分かれている。デビッド・フィンチャー監督は「最高傑作」「変態の映画だ」と語り、マーティン・スコセッシ監督は「僕にはこの映画の筋がよくつかめない」と語っている。ちなみに二人がともに絶賛しているのは「サイコ」。

■「汚名」(46年)の長~いキスシーン。その舞台裏では…

「汚名」はナチスのスパイだった父の汚名を着せられた女性(イングリッド・バーグマン)の苦悩を描く作品。当時3秒までとされていたキスシーンの倫理規定を逆手に取り、バーグマンとケイリー・グラントが約2分半、3秒以内のキスをし続けるシーンを生み出した。二人からは「お互いがくっつきすぎていて演技がやりづらい」と嫌がられたが、ヒッチコックは「スクリーンにどう映るかが大事なんだ」と意に介さなかった。

週刊朝日  2016年12月23日号

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